米NY洪水、被害拡大の原因は気候変動やインフラ老朽化
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【9月4日 AFP】ハリケーンから勢力を弱めた熱帯低気圧「アイダ(Ida)」は、米北東部で大規模な洪水を引き起こし、少なくとも47人の死者を出したが、ニューヨーク市で被害が拡大した原因は気候変動やインフラの老朽化だと指摘されている。
ニューヨーク市では、記録的な豪雨で道路が川となり、地下鉄は大量の雨水が流れ込んで運休となった。また、アパートの地下の部屋で10人以上が水死した。
米シンクタンク「センター・フォー・アーバン・フューチャー(Center for an Urban Future)」の代表、ジョナサン・ボウルズ(Jonathan Bowles)氏は、「大きな嵐が来るたびに街の機能が停止するように思えるが、それも無理はない」と指摘した。
さらに、「ニューヨーク市のインフラは、この数十年の人口増加に対応できていない。ましてや気候変動に伴って暴風雨の勢力が増し、海面が上昇している問題に対応するなど」と述べた。「駅や空港、新しい橋などの大きな事業には多額の投資が行われているが、下水道や水道のような『地味な』事業への投資は少ない」
シンクタンク「マンハッタン研究所(Manhattan Institute)」の都市経済学の専門家、ニコール・ジェリナス(Nicole Gelinas)氏は、ニューヨーク市のインフラは「数時間で約180ミリの雨を想定して造られていない」と指摘。下水道が詰まっている上に、雨を吸収するだけの緑地が不足しているため、一部の大通りは大きな嵐が来ると運河になってしまうと説明した。
アイダで最も大きな被害を受けたのはニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニアの各州だが、南部ルイジアナ州とメキシコ湾(Gulf of Mexico)沿岸にも甚大な被害をもたらした。
ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領は3日、ルイジアナ州を視察。2005年のハリケーン「カトリーナ(Katrina)」ではるかに大きな被害を受けたニューオーリンズ(New Orleans)周辺の堤防に多額の資金を投入して改修工事を行ったことが今回、壊滅的な被害を防ぐ結果につながったと主張した。
バイデン氏は、「環境に関しては事態が急激に変化しており、すでに一定の閾値(いきち)を超えている」として、「道路や幹線道路、橋を修復して、以前の状態に戻すことはできない」と述べた。
さらに、インフラをただ修復するのではなく、構造的に変えるインフラ事業を新たな規範としなければならないと述べ、3兆5000億ドル(約384兆円)のインフラ投資法案の成立を訴えた。(c)AFP/Peter HUTCHISON and Nicolas REVISE