【11月27日 東方新報】中国では数年前から「吸猫(Ximao)」「猫奴(Maonu)」という言葉を見聞きするようになった。「吸猫」は、ペットの猫のモフモフした毛に顔をうずめてにおいをかぐこと。「猫奴」は、「お猫さまに尽くす奴隷」といった自虐的な表現だ。「猫好きに国境なし」とも言えるが、中国の場合、そんな猫マニアの大半が若い独身女性なのが特徴だ。

 上海市に住む20代の女性、胡さんは1年前から茶トラの猫を飼い始めた。毎月の給料は6000元(約9万5073円)足らず。家賃や生活費を除くと現金はほとんど残らないが、自分の食費や生活費を削ってでもキャットフードやトイレの砂、猫のおもちゃを購入している。「仕事で疲れ切って帰宅しても、かわいい猫が待っている。それだけで1日の疲れがすべて吹き飛ぶ」というのが理由という。

「中国ペット業界白書」2019年版によると、中国でペットを飼っている人は6120万人。ペットの犬が5503万匹、猫が4412万匹で犬の方が多いが、最近は猫の伸び率が高い。中国でペットブームが始まった2010年ごろは、リタイアしたお年寄りが犬を飼うケースが多かったが、最近は猫を飼う若者が主流となっている。

 犬・猫の飼い主の45%が1990年代生まれで、1980年代生まれが29%と続く。そして男女別では、女性が88%を占める。月収別でみると4000元(約6万3382円)以下が49%、4000元から1万元(約16万円)未満が26%、1万元以上が24%。中国の都市部で4000元の月収では、1人暮らしでペットを飼うのは相当大変なはずだ。

「内向的な性格で、自宅にいるのが好き。パートナーは欲しいけど、面倒な付き合いはイヤ。現代の若い女性と猫は性格が似ているのですよ」。華南師範大学(South China Normal University)心理学院の韋文琦(Wei Wenqi)副教授はそう分析する。「一人っ子世代」の最近の若者は、晩婚化や非婚化が進んでいる。中国では子どもに早く結婚を望む親のプレッシャーは日本の比ではないが、都市部では不動産や物価の高騰で結婚したくても経済的に難しいのが現状。激しい競争社会で働きづめとなり、精神的・時間的余裕もない。若者の「草食化」も進み、「家で1人ゲームをする時間が一番幸せ」という人も少なくない。そんな生活に孤独を感じる時、暮らしを潤すパートナーとして、小さくかわいらしい猫が求められている。

 中国では「吸猫」「猫奴」と並び、「雲養猫(Yunyangmao)」という言葉も登場している。経済的に猫を飼えない若者がウェブサイトやSNS、アプリなど「雲(クラウド=インターネット)」の世界で猫の写真や動画を眺めたり、架空の飼い猫をアップしたりしている。そんな風潮に、お年寄りからは「子だくさんの時代は子どもが犬猫のように扱われていたが、今では犬猫が子どものように扱われている」と嘆きのような声も聞かれる。(c)東方新報/AFPBB News