【7月26日 東方新報】ペットの大型犬の長距離移動を専門業者に依頼したところ、ペットが死んでしまうトラブルが中国で発生した。急拡大するペット市場のマイナス面を象徴する問題として注目が集まっている。

 飼い主が匿名でインターネットを通じて公表した内容によると、この飼い主は南京市(Nanjing)から1600キロ南西の貴州省(Guizhou)貴陽市(Guiyang)まで移動するため、ゴールデンレトリバー「シリ(Siri)」の運送を専門業者に依頼。飼い主が航空機に乗る7月7日、シリも航空機に載せて運ぶとして2600元(約4万4000円)を支払った。

 ところが、業者は実際には航空機を使わず、「検疫を受ける必要がある」として前日の6日にシリを預かり、大型バスに載せて陸路で運んでいた。7日未明には航空会社から飼い主に「ペットの搭乗がキャンセルになりました」と連絡が来た。不審に思った飼い主が業者に電話しても「ペットは航空機に乗る」と説明を受けた。そして7日夜、貴陽市での引き渡しは空港でなく旅客ターミナル近くの空き地で行われたが、シリはおりの中で既に死んでおり、異臭も放っていた。死因は熱中症とみられる。

 そもそもシリが載るはずだった航空機は体重32キロ以上のペットは搬送できないことも判明(シリの体重は39キロ)。業者はようやく陸路で運んだ事実を認め、6000元(約10万2000円)の賠償をすると提示。飼い主は「お金はいらない。2年間一緒に過ごしたシリを返してほしい。こんな業者はつぶれてほしい」と怒りを込めて訴える。業者が本社を置く広州市(Guangzhou)交通局が調査に乗り出し、業者はペット運送に必要な運送業としての登録もしていないことが分かった。

 2018年からペットの運送サービスを営む李永鑫(Li Yongxin)さんは「私たちは車や電車、飛行機、特殊車両などを使って、月平均300 ~500匹のペットを搬送しています。しかしこの業界の悪質な業者は、顧客にうそを言って航空機を使わずに陸送し、それで利益を得ているんです」と打ち明ける。冷暖房完備のコンテナで航空機に乗せるのに比べ、車で運ぶだけなら費用は10分の1で済むという。

 中国では近年、空前のペットブームが起きており、2019年でペットの数は9915万匹に上る(犬が5503万匹、猫が4412万匹)。ペット市場は2014年の212億5000万元(約3618億円)から2020年には548億5000万元(約9346億円)に急拡大。2023年には829億元(約1兆4117億円)に成長すると予想されている。飼い主の引っ越しや旅行に伴い、ペットの運送を請け負う業者も増えている。

 シリの死の告発を通じて、「私のペットも業者に運送を依頼して死んでしまった」という訴えが次々と現れている。同じ悲劇が起きないよう、悪質業者の摘発と業界の健全化が求められている。(c)東方新報/AFPBB News