【11月26日 AFP】ハンガリー競泳界のトップ指導者で同国水泳協会(MUSZ)の役員も務めるトゥリ・ジェルジ(Gyorgy Turi、64)氏が25日、五輪メダリストのチェー・ラースロ(Laszlo Cseh)氏を含めた複数の選手から過去の身体的および精神的虐待を告発されて辞任した。

 世界水泳選手権(FINA World Championships)で計2個の金メダルに輝き、五輪でも計6個のメダルを獲得しているチェー氏を指導したトゥリ氏は、今回の疑惑で自身の立場が「手に負えない」状態に陥り、競技と所属クラブの名声に傷がつくリスクにさらされているとして「本日をもって、ハンガリー水泳協会のテクニカル副部長、取締役、そしてトレーニング委員会の責任者から退く」と地元メディアへの公開書簡で述べた。

 今年の東京五輪終了後に現役を引退したチェー氏は先月のインタビューで、2014年まで自身を指導していたトゥリ氏が選手に身体的虐待を加え、「心理的恐怖」を繰り返し与えていたと訴えていた。

 これを受けて、他の選手もトゥリ氏の虐待行為を次々と告発。その中には髪をつかまれてプールから引き上げられたり、殴られたりした選手もいたという。また、女子選手の1人は、体重が増えた選手を同氏がブタに例えていたと明かした。

 MUSZは今月に入って一連の疑惑の調査を開始したものの、ウラダール・シャンドール(Sandor Wladar)会長は、トゥリ氏の辞任について「とりあえず決断を受け入れただけ」とのコメント文を発表。

 さらに「ハンガリーの水泳界では、いかなる虐待行為も許されない。その一方で、(トゥリ氏のクラブが)ここ最近および何十年も素晴らしい結果を出してきた事実は疑いようもない。元選手たちの訴えは、それらの結果に重大な影を落としている」と続けた。

 トゥリ氏は選手1人に対して顔を殴ったり、トレーニング中に棒を使ったりしたことを認めているが、問題となっているこれらの指導法について「当時は成功への道筋の一部」だったとし、「1980年代に子どもたちの相手をしていた時に、今日受け入れられているよりも攻撃的に水から引き上げたことがない人は真っ先に非難の矛先を向けてもかまわない」と地元のニュースサイトで語っていた。(c)AFP