■命を危険にさらす配達員たち

 政府統計によると中国では、インターネットを通じて単発業務を請け負う「ギグエコノミー」と呼ばれる働き方に従事する人は、全労働人口の約4分の1を占める。約2億人が「フレキシブルな雇用関係」を結んでいることになる。

 チュアンさんは、配達のルートと時間を決めるアプリのアルゴリズムのせいで、多くの配達員が命の危険を感じていると話す。定刻を過ぎると配達員には「遅配」のペナルティーが科される。

 別の配達員は、アプリが定める配達時間には調理に要する時間も含まれており、配達員本人にはどうにもできない部分で生じた遅延によって報酬を減らされる場合があるとAFPに語った。

 6億2800万人の顧客を抱える美団は、配達時間を4通りの方法で算出し、そのうち最長の時間を選んだ上で余裕を持たせて配達員に提示していると説明。配達員は科された不当な罰金には異議申し立てができると主張している。

 北京のコンサルタント会社トリビアム(Trivium)のケンドラ・シェーファー(Kendra Schaefer)氏は、宅配プラットフォームが配達員に割り当てる条件や報酬を決定する仕組みに透明性が欠けている点が深刻な問題だと指摘。「アルゴリズムは効率性の最大化を目指すものだ。残念ながら、社会が進化する中で、アルゴリズムは人間を犠牲にして効率性を最大化することが明らかになってきた」と語った。(c)AFP/Beiyi Seow and Yuanhao Zhang