【11月8日 CNS】「朝起きると、すぐ枕の横に置いたスマホに触れる」「寝る前に必ずスマホをしばらく見る」「食事をしないよりもスマホをいじれない方がつらい」…。こうした事例は「インターネット依存症の若者」の典型というイメージだが、最近の中国では「銀髪族」と呼ばれる高齢者がこうした依存症に陥っている。

 2020年の第7回中国国勢調査によると、2020年末段階で中国の60歳以上人口は2億6400万人に達し、高齢化はさらに加速している。北京市統計局が60歳以上の1181人の住民に電話とオンラインで調査したところ、88.7%がスマートフォンやタブレット端末、パソコンなどの電子機器を使用していると回答。そのうち87.1%が1日1時間以上、44%が1日3時間以上使用している。主に使用している機能は電話メッセージ、SNSのチャット、オンラインショッピング、ニュースや情報の収集などだった。

 かつては高齢者がデジタル時代に取り残される情報格差が問題となり、社会からの疎外感や断絶が起きないようインターネットの利用が推奨されたが、高齢者が長い時間スマートフォンなどを使用することは心身の健康に悪影響を与える恐れがある。高齢者は余暇が比較的多く、インターネットに夢中になると中断することが難しい。長時間の使用は視力や筋力の低下をもたらす上、ネット上の膨大な情報の真偽を見分けられず、虚偽の内容を信じてしまいやすい。

 中国社会が急速に変化し、仕事に追われる若者が高齢世代とふれあう機会が減る中、「空き巣老人(子どもや孫と同居していない高齢者)」たちの孤独感は強まっている。そして「死」「孤独」「残り時間が少ない」といった恐怖感から目を背ける手段としてインターネットが使われている面がある。投稿ショートビデオやライブ配信、ソーシャルアプリなど、インターネットの仮想空間はユーザーにある種の帰属意識を与えて、一時的に孤独から逃れることができる。

 一方、インターネットとつながることは高齢者に新しい世界への扉を開いている。世界の情勢を知り、友人や家族と情報を共有できることは、高齢者の生活を充実させている。

 日本と同様、中国も高齢化社会への道のりを加速させている。 第7回国勢調査によると、10年前と比較して総人口に占める15~59歳の割合は6.79%減少し、60歳以上は5.44%増加し、全人口の18.7%を占めている。将来的には毎年1000万人の高齢者が増える見込みだ。

 中国は最近、「行動年齢」と「健康年齢」の概念を社会に普及させており、高齢者の獲得感、幸福感、安心感を高める施策を導入しようとしている。(c)CNS/JCM/AFPBB News