【11月1日 CNS】北京市北部の四環路(第4環状道路)に近い中関村(Zhongguancun)地区は大学が林立し、コンピューター関連企業が急速に発展したことから「中国のシリコンバレー」と呼ばれてきた。近年はIT企業の急速な拡大に伴いオフィスビルが不足し、百度(Baidu)、網易(NetEase)、新浪網(Sina)、快手(Kuaishou)などの大手IT企業は、より大きなオフィススペースを求め北に移動。現在、五環路(第5環状道路)の外にある後廠村(Houchang)の南に位置する国家ハイテク産業開発区「中関村ソフトウエアパーク」が、中国の新しいシリコンバレーになっている。

 中関村から車で30分ほどの後廠村には、「BAT」と呼ばれる中国の3大IT企業の百度や騰訊(テンセント、Tencent)をはじめ多くのIT企業の北京本社と、網易、聯想(レノボ、Lenovo)、滴滴出行(Didi Chuxing)、快手、東軟集団(Neusoft)などのハイテク企業やIT企業が集まっている。中国メディアはこのエリアを「中国で最も高い経済生産単位とIQ密度を持つエリア」と呼んでいる。同じ交差点に位置するテンセント、百度、網易の3社だけで2020年の営業収益は6628億元(約11兆8049億円)に及ぶ。

 このソフトウエアパークで働く人々のほとんどは20代と30代で、名門大学の出身者が多い。彼らは自らを新世代の「後廠村人」と呼び、米国のシリコンバレーと同様に高学歴、高収入、若さが「村人」のイメージとなっている。

 中国では午前8時出勤、午後5時退社の職場が多いが、後廠村ではほとんどが朝9時か10時ごろ出勤し、夜7時30分から8時30分ごろに退社する。仕事はハードだがIT企業は依然として若者に人気。最大の理由は給与の魅力だ。「2021年インターネット新卒採用給与表」によると、大手IT企業各社が新卒に与える給料は年20万元(約356万円)を超えることもあり、特に優秀な新卒者は年収が40万元(約712万円)近くに達する。

 中関村は1980年代に100近くの科学・技術企業が集まり、電子製品の店舗が並ぶ「電子街」として全国的に有名となった。 2007年ごろに最盛期を迎えたが、近年はデジタル製品の普及や業界内の競争激化、オンライン商取引の台頭により店舗は徐々に減少。一方でハイテク産業の誘致や人材、技術、資本の集積により、国際的なハイテクセンターに進化を遂げた。清華大学(Tsinghua University)、北京大学(Peking University)、中国科学院(Chinese Academy of Sciences)、その他の有名な大学・研究機関がハイテク企業の成長を後押ししている。

 現在の中関村は「電子街」から「創業街」に様変わりした。2020年のデータで、新技術をベースとして設立された企業は2万6000社に達する。また、約200のビジネス・インキュベーター(新技術支援施設)や、700以上の業界団体や民間企業ユニットがあり、約1400のベンチャーキャピタル機関、1000を超える法務、会計、知的財産サービス機関が集まっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News