【11月4日 AFP】美食の国フランスを象徴する北西部ノルマンディー(Normandy)地方の特産のチーズ、カマンベール。その地位がイタリア産のモッツァレラに脅かされている。

 カマンベールとモッツァレラ。厳密にはライバルとは言えない。独特の香りで知られるカマンベールは単体で食べられるが、モッツァレラは主にサラダやピザ、パスタの材料として使われる。

 しかし、フランス国内でカマンベールの人気が衰えているのは確かだ。それはチーズの好みや伝統が変化していることを如実に示している。

「カマンベールは古くさくて一段下とみなされており、苦戦している。それに対しモッツァレラは若者の間ではやっている」と、首都パリのおしゃれな一角にあるスタイリッシュなチーズバー「ラ・クレムリ・デュ17(La Cremerie du 17)」のオーナー、マイク・ビジャ(Mike Bija)氏は言う。

 店ではワインと共に、生乳から作った伝統的なカマンベールを提供しているが、かつては異端と呼ばれたイタリア産水牛の乳を使ったマイルドな種類も用意している。

 仏農業・食料省によると、カマンベールの販売量は2020年までの5年間で11%減少し、年間4万8000トンに落ち込んだ。国産のチーズ主要5種のうち販売量が減ったのはカマンベールだけだった。

 一方、同じ期間のモッツァレラの販売は62%と大幅に伸び、年3万8000トン近くにまで拡大した。

 調査会社ニールセン(Nielsen)は最新の調査報告で「モッツァレラの販売量は近いうちにカマンベールを抜くだろう」と予想している。

 カマンベール需要の落ち込みは、食後にチーズを食べる習慣が、今ではディナーパーティーや祝い事などでしか見られなくなったことが大きな要因となっている。