【10月29日 東方新報】中国では最近、「銀髪経済(シルバー経済)」という言葉が定着するようになった。高齢者のレジャーや買い物、もしくは高齢者のケアのためのサービスなどを指す。高齢人口の増加により市場が拡大しているが、経済活動の足かせとなっているコロナ禍が逆に「銀髪経済」を押し上げている要因もある。

 中国が2020年に実施した第7回国勢調査によると、60歳以上の人口は2億6000万人を超え、総人口の18.7%を占めるようになった。中国では男性は60歳、女性は55歳で定年を迎え、年金を受給する。定年後、日本のように同じ職場でフルタイムの再雇用で働く人は少数派で、親族・知人のネットワークでパートタイム的に新しい仕事に就く人が多い。年金プラスそこそこの収入でシニアライフを楽しむ高齢者は多く、経済力・消費力は底強い。ただ、中国では日用品から化粧品、フードデリバリーまではインターネットを通じた買い物やキャッシュレス決済が当たり前となっている中、高齢者の半数はスマホアプリを使えず、デジタルデバイド(情報格差)が問題となっていた。

 ところが2020年からの新型コロナウイルス拡大によりステイホームを余儀なくされると、「孫にスマホで注文する方法を教わった」「同世代の友人同士で操作方法を覚えた」という高齢者が増加。2021年1~9月にシルバー世代がオンラインで購入した米、小麦粉、油、ティッシュなどの売上高は前年同期比で10倍を超えた。オンラインで旅行を予約したり介護用品を注文したりと、選択するサービス・商品の幅も広がった。

 生活関連サービス企業の美団(Meituan)によると、2021年の年代別オンラインユーザーでは50歳以上が前年比46.7ポイント増となり、全年齢層の中で最も成長率が高くなっている。ビッグデータで見ると、シルバー世代は「ミルクティー」「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」「火鍋」「焼き肉」などのガッツリしたキーワードを検索しており、「若返り」の傾向もみられるという。エリア的には農村部での売り上げが伸びており、年齢層だけでなく地域的な情報格差の解消につながっている。

 中国の60歳以上の人口は2030年には3億7000万人になると予測されている。高齢者をターゲットにした企業も増えており、「銀髪経済」はネット経済の重要な成長源として期待されている。(c)東方新報/AFPBB News