【10月30日 東方新報】中国のホテルなどで小型カメラが仕掛けられ、盗撮された映像が売買されていることが社会問題となっている。

 10月7日、仕事で湖南省(Hunan)郴州市(Chenzhou)にある臨武国際ホテルに宿泊した女性の唐(Tang)さんは、ベッドの向かいにあるコンセントの差し込み口の穴から、カメラのレンズのようなものが見えることに気付いた。ホテルのフロントを呼び出して確認すると、超小型カメラが仕込まれていたことが判明。女性は13階にある別の部屋に移ったが、差し込み口を見てみるとこの部屋にも同様に隠しカメラが見つかった。女性から通報を受けた警察がカメラを押収し、捜査をしている。ホテル側は「警察の捜査に協力する。現時点で利用客の映像流出は確認されていない」としているが、唐さんは「私への連絡はその後なく、不誠実だ」と怒りが収まらない。

 ホテルやマンションにショッピングモールの試着室、病院の診察室…。カメラの超小型化と遠隔での操作や画像入手が可能になった「技術革新」により、盗撮用カメラがあちこちに設置されるようになった。2019年3月に山東省(Shandong)済寧市(Jining)の警察に摘発されたグループは、ホテル室内のシャンデリアやエアコンなどに約300台のカメラを設置し、スマートフォンで操作しながら女性の裸やカップルの映像などを入手していた。盗撮グループは違法サイト業者に「放映権」を販売し、業者が盗撮カメラのアカウントをネット上で月額20~60元(約356~1069円)の価格で販売。警察がサイトを閉鎖するまで、盗撮ビデオの視聴回数は10万回を超えていた。

 こうした「盗撮ビジネス」はネット上の裏サイトで広まっており、「ホテル・民家50か所の盗撮動画ライブ配信が288元(約5134円)で見放題」というようにパッケージで売買されている。

 広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)では最近、結婚式場やスーパー、民家など十数か所の防犯カメラの映像を違法に入手していた男を逮捕した。男は2019年末から約500か所の防犯カメラをハッキングして動画を手に入れ、自分で視聴したり仲間に横流ししたりしていた。

 工業情報化部や公安省など政府のサイバーセキュリティー部門は今年に入り、「市民のプライバシーを侵害する盗撮行為を集中して取り締まる」と表明。警察の捜査を強化し、インターネットのプラットフォーム業者には盗撮用カメラの売買や違法画像の取引を許さないよう呼びかけている。ただ、インターネットの闇取引をすべて把握することは困難で、カメラ店が店頭で盗撮用カメラを販売するケースもあり、盗撮の根絶は難しい。

 中国の刑法第283条では「特殊なスパイ機器や盗聴・撮影用の機器を違法に製造・販売した者は3年以下の懲役、拘留、罰金または科料に処する。悪質な場合は3年以上7年以下の懲役とする」と規定。治安管理処罰法第42条では「盗撮や盗聴により他人のプライバシーを侵害した者は5日以上10日以下の拘留または罰金を科す」と定めているが、専門家の間では「法律を改正し、厳罰化する必要がある」という声が高まっている。(c)東方新報/AFPBB News