【9月25日 東方新報】東京五輪に水球女子中国代表で出場した熊敦瀚(Xiong Dunhan)選手の自撮り写真が「美人すぎる」と評判になり、それに対しネットユーザーが「写真加工アプリを使っている」と文句をつけたことが中国で話題になった。

 身長178センチ、23歳の熊選手は東京五輪開幕前、中国版ツイッター「微博(ウェイボー、Weibo)」に、中国代表のユニホームを着て国旗入りマスクをつけた自撮り写真を投稿。ぱっちりした二重に大きな瞳、マスクの上からでも分かるシャープなフェースラインが「美しい」とネット上で評判となり、日本のネットメディアでもニュースとなった。

 熊選手は五輪開幕日の7月23日の投稿で世間の注目に感謝しつつ、「私のルックスではなく私たちの活動に視線を向けてほしい」と求めた。すると、あるネットユーザーが熊選手の数年前のインタビュー写真を探し出して投稿。目元や顔の輪郭が自撮り写真と大きく異なり、「これは写真詐欺だ」と文句をつけた。

 これに対して熊選手は「私は写真加工アプリが大好きなんです」と写真の加工をそのまま認め、「スポーツは私の職業、努力は私の責務、美を愛することは女の子の天性です」と反論してみせた。

「日本女性は化粧で美人になる。韓国女性は整形手術で美人になる。中国女性は写真加工アプリで美人になる」。これは中国で数年前からよく使われるようになったフレーズだ。同じ「美の追究」でも代表的な方法が異なるというジョークだ。特に中国企業・美図(Meitu)の写真加工アプリ「美図秀秀」は大人気。スマートフォン画面で「おまかせ美顔」「美白」「ニキビ消し」「小顔」「目を大きく」などのボタンを選んで加工すれば、「魔法のように自分の顔が美人になる」と若い女性をひきつけた。極端に目が大きく、あごを細くして、顔のバランスがおかしいほどの加工をする人も多い。

 上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)人文芸術学院の調査によると、SNSで自撮り写真を投稿する女性の9割近くが写真加工アプリを使用。このうち「かなり加工している」が36%、「ほどほど加工している」が35%、「少し加工している」が16%だった。1割強の「加工していない」と答えた女性は、アップの写真より遠くから撮影した写真を投稿している人が多かった。

 中原工学院(Zhongyuan University of Technology)ジャーナリズム・コミュニケーション学院の熊錚錚(Xiong Zhengzheng)講師は「ソーシャルメディアが発達した時代における自己アイデンティティーを構築する一つの形と言える。美化された自撮り写真をSNSに投稿して『いいね!』や褒め言葉をもらい、世の中に肯定されたい心理を満たしている」と分析する。

 ただ、自撮り写真を投稿する女性のうち「毎日、自撮りをしている」人が59%に上るという調査もあり、「自撮り中毒」のような女性も少なくない。写真の美化した顔と実際の顔にギャップを感じ、整形手術を希望する10代の女性が増えてきているという。

 美図の検索データベースによると、美化した自撮り写真を投稿した女性に対する友人の反応で最も多いキーワードは「ニセ顔」「母すら分からない」「ヘビの妖怪」だった。自撮り遊びもあまりのめりこまず、冷静になった方が良さそうだ。(c)東方新報/AFPBB News