【8月11日 東方新報】中国で最近、「食品級」「食べられる」と宣伝する化粧品が売られている。安全性を強調する狙いだが、専門家は「まったく根拠がない」と批判している。

 中国では日常の生活用品もインターネットで購入することが当たり前となっているが、化粧品を検索すると「食品級」と称する口紅やスキンケア製品、フェースマスク、日焼け止めなどが数々表示される。また、ネットの動画中継で商品を宣伝してライブ販売するインフルエンサーは「このエッセンシャルオイルは天然素材なので飲める」とパフォーマンスをしている。

 しかし中国メディアによると、例えば「妊婦専用口紅 4種類のエッセンシャルオイル配合 食品級」と宣伝している輸入口紅は、4種類のオイルは入っているものの全体で30種類の成分が入っており、一般の口紅に使われる化学原料も含まれていた。輸入化粧品はPRしたい部分だけを中国語でシールを張り、その他の原料は外国語表記のままというケースが少なくない。また、ある日焼け止めは「食品原料で製造」をうたっているが、日焼け止めを防ぐ化学物質も当然含まれている。

 中国の化粧品業界では、商品が環境に優しく、無害であることをアピールするため「純植物」や「天然」という表現を使っていた。しかし現在は広告法によりこれらの断定的表現は使用禁止となっている。そこで一部の企業は「食品級」「食べられる」とPRするようになった。

 化粧品と食品を結びつけることが宣伝になるという発想自体が不思議な感じがするが、そもそも中国では最近まで化粧文化はあまり浸透していなかった。高校生までは男子も女子も制服は上下ジャージーで、日常生活においては大学入試に向けた受験勉強がすべてに最優先され、化粧をするマインドが起きづらい。大学生になっても「周りが化粧をしないから自分もしない」という感覚。「美人は化粧をする必要はない。自然美が一番」という伝統的価値観や、「化粧をビシッと決めている女性は恋人にはいいが、結婚相手は質素な人がいい」という男性目線の影響もあるようだ。最近は若い女性を中心に化粧をすることが当たり前になってきたが、まだ化粧文化が成熟しているとは言いにくい。

 また、ここ数年はコラーゲンゼリーやコラーゲンドリンク、美白サプリなど「食べて健康と美容をキープする」ことが流行している。漢方の「医食同源」の考えにもフィットしており、その流れで化粧品を「食品級」と例える商法が広まっている面がある。

 南開大学(Nankai University)医療健康法研究センターの宋華琳(Song Hualin)所長は「化粧品を食品と表現することは、うおのめと真珠、石と翡翠(ひすい)を同じものと扱うようなもの。虚偽にすぎない」と指摘する。各地の消費監督部門も「化粧品を食品級と例えてはいけない」と規制しているが、「言ったもの勝ち」のような業者が後を絶たない。(c)東方新報/AFPBB News