【9月9日 CNS】新エネルギー車が急速に普及している中国では、耐用年数が過ぎた使用済みバッテリーも大量に生み出されている。しかし業界のリサイクルシステムはまだ確立されておらず、正規ルート以外の不適格業者が多くの使用済みバッテリーを処理している。

 工業情報化部は2018年と今年1月、2回にわたり「新エネルギー車用使用済みバッテリーの総合利用に関する業界標準条件」を公表。適正リサイクル業者として約20社を「ホワイトリスト」に選んだ。

 ホワイトリストに登録されたある企業は、最初に使用済みバッテリーの「健康診断」をするという。企業の担当者は「再利用するには残存エネルギー量や消耗度を調べる必要がある。同じメーカーの同じ時期の製品でも、バッテリーの使われ方ではそれぞれの状況が異なるため、『健康状態』は大きく異なる。これに相当の手間がかかる」と説明する。

 使用済みバッテリーをどのようにリサイクルするか、そのスキームは確立していないが、手法の一つがバッテリーの材料を再利用することだ。電気自動車用の電池メーカー大手の「寧徳時代新能源科技(CATL)」が、廃電池の金属をリサイクルする企業「邦普集団」を買収・子会社化したのは、その代表例といえる。

 寧徳時代新能源科技の責任者は「使用済みバッテリーからコアメタルの99.3%を回収することができるようになった」と説明。ただ、電気自動車に使われるリン酸鉄リチウムバッテリーは高価な金属や材料が少ないため、複雑な回収コストと比べると利益率は低いという。

 業界関係者によると、使用済みバッテリーの80%近くは正規ルート以外で取引され、不適格な小さな工場で処理されているという。前述のホワイトリスト企業の担当者は「ヤミ業者はバッテリー処理の工程で環境保全基準を無視しているので、低価格で処理を請け負っている。正規業者が取り扱える使用済みバッテリーの数は非常に少ない」と指摘する。

 電気自動車のバッテリーはリン酸鉄リチウム電池から最近は安全性がより高い三元系リチウム電池が使用されている。ニッケルやマンガン、コバルトなどの価値の高い金属が多い三元系リチウムの使用済みバッテリーは2022年から大量に出回る時期に入り、業界でより激しい競争が起きるのは確実だ。寧徳時代の関係者は「リサイクルシステムを早急に確立し、使用済みバッテリーを厳格に管理しないと、環境破壊や安全上の問題が起きる」と指摘する。

 市場調査会社のSNEリサーチ(SNE Research)によると、中国の使用済みバッテリーの容量は2020年に約25ギガワットに達し、2025年には90ギガワットに達するという。リチウムとコバルトの価格が高騰しているため、国際市場調査機関によると、世界のバッテリーリサイクル産業は2025年に122億ドル(約1兆3452億円)、2030年には181億ドル(約2兆円)に達する見込みだ。中国は最大のバッテリーリサイクル市場となるため、早急なリサイクル体制の確立が求められる。(c)CNS-北京日報/JCM/AFPBB News