【9月9日 AFP】米航空宇宙局(NASA)の火星ヘリコプター「インジェニュイティ(Ingenuity)」の当初の飛行予定は5回で終わりだった。しかし、結局12回の飛行に成功し、予想以上の成果を挙げたことから、NASAはインジェニュイティのミッションを無期限に延長した。

 この超軽量小型ヘリを火星に運んだ無人探査車「パーシビアランス(Perseverance)」は、火星の古代生命の痕跡を探すことが主な任務だ。NASAは6日、パーシビアランスによる岩石サンプル採取の成功を確認したと発表した。

「すべてが非常に順調に進んでいる」と、インジェニュイティの機械工学チームを率いるジョシュ・ラビッチ(Josh Ravich)氏は話す。「火星表面での成果は予想以上だ」

 プロジェクトには大勢の人が関与したが、現在は十数人だけが日常業務を続けている。ラビッチ氏は5年前にチームに加わった。

「自分がこのヘリコプタープロジェクトに参加する機会を得た時に考えたことは、みんなと同じだったと思う。そんなことが果たして可能なのだろうか…」とラビッチ氏は振り返る。

 ラビッチ氏がそう思ったのも無理はない。火星の大気密度は地球の約100分の1しかないからだ。例えるなら、火星でヘリコプターを飛ばすのは、地球の上空30キロ近くの薄い大気中でヘリを飛ばすようなものだろう。

 しかも、インジェニュイティの飛行は数々のセンサーで誘導される。地球からの通信に15分の遅延が発生するため、リアルタイムに誘導することができない。

 4月19日、インジェニュイティは初飛行に成功し、地球以外の惑星で飛行した初の動力飛行機として歴史的な偉業を成し遂げた。

 あらゆる予想を覆し、飛行回数は12回となった。これまでの最高飛行高度は約12メートルに達し、12回目の飛行では航続時間が2分49秒に及んだ。総飛行距離は約2.6キロとなっている。