■「ばかげている」

 スペイン有数のワインメーカー、ファミリア・トーレス(Familia Torres)は20年以上前から高地栽培を取り入れているが、当初は疑問視されていた。

 19世紀末創業のトーレス家のワイナリーは1998年、パナデス地域の拠点から北東160キロのトレンプ(Tremp)でブドウ栽培を始めた。標高950メートルだ。ピレネー山脈を望むこの高地でワイン用のブドウが栽培されたことはそれまでなかった。

「地元の農家は、ばかげている、ブドウが成熟しないと思っていました」と語る農園責任者のシャビエル・アドメジャ(Xavier Admella)氏。「気候変動で、私たちが正しいことが証明されました」

■「新しい技術」で生き延びる

 ファミリア・トーレスのミゲル・A・トーレス(Miguel A. Torres)社長によると、トレンプの気温は海抜ゼロの土地と比べてほぼ10度低い。この温度なら「酸度の非常に良い白ワイン」の原料となるブドウ品種の栽培が可能だと言う。

 世界150か国にワインを輸出している同社は、今ではほぼ消えてしまった品種の株を再生する研究所も持っている。高地に適した品種もすでにトレンプに植えてある。

 しかし、気候変動に適応するためには、かなりの資金が要る。「前途は険しい」と語るトーレス社長。ワイン業界はスペイン政府と欧州連合(EU)の両方に支援を要請していると言う。

 ガイ・デ・モンテッラ氏も同じく、スペインのワイン産業が生き残るためにはブドウの高地栽培を進め、さらに「成熟が遅い種を探す」必要があると言う。同氏はスペインの一部、特に南部がいずれワイン生産に適さなくなる可能性も否定しない。

 でも悲観論ばかりではない。「気候変動により、多くのワイナリーが背筋を正し、ワイン造りを学び直しています。先祖代々のやり方ではなく、新しい技術を求めながら」とサモラ教授は指摘する。「そのおかげで、数年前に比べてはるかに良いワインができています」 (c)AFP/Rosa SULLEIRO