【9月1日 CGTN Japanese】ビジネスで成長するための重要な要素の一つは「市場選び」です。2020年のデータによりますと、中国市場に進出している日系企業は約1万3600社で、中国関連のビジネスに携わる企業は3万社を超えています。日系企業は北京や上海などの大都市だけでなく、沿海都市や地方の中小都市にも進出しており、こうした都市では外資企業を誘致するための優遇政策として、企業所得税の減免や事業支援金の給付などが実施されています。

 その一つである湖北省(Hubei)襄陽市(Xiangyang)が2012年に設立した「ハイテク経済開発区」には複数の日系企業が拠点を構えます。そのうちの一社、トラクターをはじめとするISEKIブランドの農業機械で知られる井関農機(株)の関連会社、東風井関農業機械有限公司は襄陽市で10年以上の実績をもっています。同社の佐藤陽一総経理に、襄陽市を選んだ理由や経営状況などを伺いました。

――中国にはいつから進出を?

 佐藤総経理:中国に東風井関農業機械有限公司を設立したのは2011年です。最初は借用した場所で事業を始めましたが、2017年2月にこの襄陽工場を建てました。大規模な生産を開始したのはそれからです。

――襄陽市にはどのような優遇政策がありますか?

 佐藤総経理:初期の段階では襄陽市からかなりの寄付をいただいて、この工場を建てることができました。ほかにも援助にはさまざまな種類があります。例えば、農機の購入者への補助金制度や、工場の建設費用の半額支援、土地の借り入れにかかる費用の軽減などです。各社へのこうした援助は、今も増え続けています。

――コロナ禍の影響はどうでしたか?

 佐藤総経理:感染の拡大を受けて工場生産を一時的に停止して、従業員は隔離状態に入りました。生産が再開したのはその3カ月後です。当時は部品の一部を日本から送ってもらうなどして対応しました。今はほぼ安定して、徐々に回復しています。売り上げの面では、2020年はやや減少して80億円にとどまりましたが、今年は90億円まで回復できると思います。

――中日両国は経済協力における補完性と必要性

 佐藤総経理:中国は非常に大きな国で、消費力も生産力も強いです。ですから中国抜きでは今の世界は回らないでしょう。日本の内需だけではもう食べていけず、やはり中国を頼らないといけません。中国で作った部品も使わなければ価格を抑えられませんから、日中の関係はこれからも続くでしょう。ただ、中国の賃金の上昇に伴って価格も上昇します。ですから、中国側が変動費と固定費を下げる努力をし、製品の付加価値を上げていくことが、取引の継続には必要だと考えます。

――中国進出を考える日系企業に、襄陽市のどんなところを薦めたいですか?

 佐藤総経理:まず、自然災害が少ないことです。日本は地震や台風が多いですが、襄陽市ではまったく無いと認識しています。それから衣食住に関してですが、中国はちょうど良い段階に発展していて、民衆も豊かになってきていますから、日本人も特に生活に困ることなく楽しく過ごせます。また、襄陽市の場合は家賃などのコストも低く済むので、いい場所だと思います。

 外資誘致の取り組みが始まってから10年以上が経過した襄陽市には、井関農機や日産自動車、中日龍、日本発条、松本工業など日系企業15社を含む外資系企業208社が進出しています。今年も外資系企業30社以上を誘致する計画が進行中で、誘致総額は150億元(約2558億円)になるということです。

 これからの中日間の経済協力の舞台としても、今まさに急発展を迎えている襄陽市に注目が集まっています。(c)CGTN Japanese/AFPBB News