【8月30日 CGTN Japanese】「新時代の要求にふさわしい中日関係の構築を目指して」と題した国際シンポジウムが28日、北京で開かれました。主催は中国の政府系シンクタンクである中国社会科学院。この5月で設立40周年を迎えた同院傘下の日本研究所が運営する「中国社会科学フォーラム(2021)」ならびに研究所設立40周年記念行事として開催されました。北京会場のほか、日本や米国からはリモートで出席した学者と有志ら70人あまりが出席し、意見を交わしました。

「新しい時代にふさわしい中日関係の構築」は2019年6月、G20大阪サミットの参加で日本を訪れた習近平国家主席が、時の安倍晋三首相との会談で明確にしたコンセプトです。シンポジウムでは、このメインテーマをめぐり、出席者たちからそれぞれ明確な提言が行われました。

 中国全国人民代表大会常務委員会の顧秀蓮元副委員長はコロナ対策での協力強化とオリンピックでの協力という二点を取り上げ、「両国国民の健康を守ると同時に、地域と国際公衆衛生分野での協力に共に貢献していく」「パンデミック下で開かれるオリンピックには新たな使命が与えられている。中国が東京五輪の開催を積極的にサポートしてきたように、日本にも2022年北京冬季五輪の開催を支持することを期待する」と話しました。

 リモートで参加した日本国元首相の福田康夫氏も、来年の北京冬季五輪・パラリンピックに触れ、「中国がコロナ対策と大会運営の両方をしっかりと対処できることを信じており、成功を祈っている」とし、地球温暖化、感染症、テロなどの地球的課題には世界各国が「人類運命共同体」の姿勢で対処する必要があり、中でも日中両国が協力を深めるべきだと訴えました。そのうえで、日中間で対話が不足している現状を指摘して、「両国首脳がいち早く会談を実現し、各分野での交流も強化させる必要がある」と強調しました。

 中国社会科学院の謝伏瞻院長は「世界が百年に一度の大変革にあるからこそ、両国の有識者が歴史と戦略的な高みから、理性的で責任ある姿勢をとり、対抗的な考えをあきらめ、率直に対話し、中日関係の長期的かつ安定した発展を共に守っていく必要がある」と話しました。

 日本の垂秀夫駐中国大使は、足元の日中関係は困難にぶつかった面があるものの、「双方にとって相手国との関係が最も重要な二国間関係の一つである事実は変わっていない」とし、相手のことを思いやる精神に基づいて、誠実に意思疎通を重ねるよう呼びかけました。また、オリンピックでの交流については、「東京での成功が北京での成功につながり、北京冬季五輪が必ず成功裏に開催されることを希望する」と期待を述べました。 

 中日友好協会常務副会長で、前中国駐日本大使の程永華氏は、両国関係が岐路に立たされている現状に触れ、「中国の発展は平和的な発展で、世界にとってチャンスである。日本はそうした中国の発展を客観的かつ理性的にとらえる必要がある」と話し、日本国内の対中好感度の低迷について、「地理的に近く、文化のつながりも深い上、民間の友好と地方交流には以前からの積み重ねがあることも忘れずに、民意の土台の改善に向かって取り組むべきだ」と訴えました。

 中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長は、「中日関係は2017~19年の好転の時期を経て、再び岐路に立たされている。しかし、状況が複雑であればあるほど、両国は戦略的安定性をこれまで以上に強め、平和と互恵協力の原則を守り、実務的な協力の成果を積み重ねることで両国関係に優良資産を増やし、両国関係の確実性をもって世界や地域情勢の不確実性を減らしていく必要がある。コロナ禍を乗り越えて対話と交流を続け、情報の障壁を打破して、相互信頼の流失を阻止すること。初心を貫き、相互理解と尊重を守り、相手のことを深く知り、受け入れる努力を続けるべきだ」と提案しました。

 このほか、中国社会科学院世界経済・政治研究所の張宇燕所長、日本総合研究所国際戦略研究所の田中均理事長、米国カリフォルニア大学バークレー校のスティーブン・ヴォーゲル教授、中華日本学会の高洪会長、米国ジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授、復旦大学の胡令遠教授、日本京都大学・中西寛教授、日本法政大学の王敏名誉教授、日本国在中国大使館・野村恒成公使、北京大学・王新生教授ら中日米の専門家らもそれぞれ基調報告を行いました。

 米国の著名な社会学者で、東アジア研究の第一人者であるエズラ・F・ヴォーゲル氏(1930-2020)を父に持つスティーブン・ヴォーゲル教授は、父親、自身と息子の三世代にわたる中日両国との付き合いを振り返り、中日関係はグローバル視野の中で研究することの必要性を改めて提起しました。

 マイク・モチヅキ教授は発言の中で、中日関係がアジア太平洋地域の安定化に果たせる役割という視点から現状を分析し、中日両国は「二国間関係の安定と改善に向け共に努力すべきだ」と具体的に提案しました。

 なお、フォーラムでは「現代中国における日本研究の40年」をテーマに、政治・経済、社会・文化、外交・戦略などにフォーカスした分科会も同時開催されました。(c)CGTN Japanese/AFPBB News