■中国はどう見ているか?

 バイデン政権は、米軍撤退に関するドーハの和平合意を取り決めたのはドナルド・トランプ(Donald Trump)前大統領であり、米国民の大多数が「永遠に続く戦争」を終わらせることを望んでいると指摘した。

 一方、トランプ氏は自身の後継者に責任があると主張し続けている。15日には、バイデン氏に対し、「アフガンで今の事態が起きるのを許した責任を取り、不名誉な形で辞任する時が来た」と述べ、同氏がアフガンに対して行ったことは「米史上最大の敗北の一つとして語り継がれるだろう!」と付け加えた。

 アントニー・ブリンケン(Antony Blinken)米国務長官は、米同時多発攻撃を仕掛けたアルカイダ(Al-Qaeda)の実行犯らに裁きを受けさせるという本来の任務は「成功した」とABCに語った。

「米国がこの先5年、10年、20年とアフガンの泥沼に足を取られると、世界中の戦略的な競争相手を喜ばせることになるのも事実だ。それは国益に反する」

 一方、バイデン政権から最大の競争相手と見なされている中国は、米政府をすかさず批判。共産党機関紙・人民日報(People's Daily)系の環球時報(Global Times)は、アフガニスタン情勢で分かったのは、米国が「自己の利益のためには同盟国を常に見捨てる、信頼できないパートナー」であることだと論じた。

 しかし、米シンクタンク「新米国安全保障センター(Center for a New American Security)」のリチャード・フォンテーヌ(Richard Fontaine)最高経営責任者(CEO)は、これで中国が勢いづき、台湾を侵攻するなどの動きに出ると考えるのは短絡的だと指摘する。

 むしろ中国は、米国が高い代償を払ってでもアフガニスタンから撤退するのは、太平洋地域に本腰を入れて関与しようとしている表れと捉えているはずだとフォンテーヌ氏は述べた。

 一方で同氏は、米国はアフガニスタンの政府を事実上タリバンに移譲することで大きなリスクを負っていると指摘した。タリバンはアルカイダと正式に手を切っていない。

「テロの脅威の可能性はかなり高いと思う」とフォンテーヌ氏は言う。「だとしたら、米国が中国でより大きな戦略的課題に向き合おうとしても、邪魔が入る事態が増えるかもしれない」