■「永遠に何かを奪われた」痛み

 だが、世界保健機関(WHO)は、FGMは健康上のメリットはない上にリスクも高く、少女の権利を侵害する「男女差別の極み」だと警告している。

 シンガポールにおけるFGMの公式データはないが、サザさんのグループが調査したイスラム教徒の女性の75%がFGMを受けていた。中国系住民が多いシンガポールの人口570万人のうち、約10%がマレー系イスラム教徒だ。

 同国のイスラム教徒に対して指導的立場にあるシンガポール・イスラム教評議会(Islamic Religious Council of Singapore)は、FGMに反対している。広報担当者はAFPに、「女性器切除を含め、医学的に有害だと証明されているいかなる処置」も避けるべきだという立場を取っていると語った。

 活動家らは、この慣習が地下に潜る形で行われるようになるのを恐れ、禁止は求めていない。だが、保健当局に対しては医学的に不要であることを公式に発表するよう求め、イスラム評議会には宗教的義務ではないと明言するよう訴えている。

 それでも、古い慣習を変えるのは難しい。

 サザさんのグループのメンバー、ズビー・アリ(Zubee Ali)さん(59)は、2人の娘のFGMを拒んだ。しかし、自分の親族がめいや孫にFGMを受けさせるのを止めることはできなかった。「女の子たちの成長にはまったく関係のない、意味のないしきたり」だと言う。

 ズビーさん自身、深い痛みを抱えている。女性器の一部を切除されたことで、永遠に何かを奪われたと感じているのだ。

「自分が完全で、何も損なわれていないのがどういうものか、私には決して分かりません」とズビーさんは言う。「私からは何かが奪われてしまったのです」 (c)AFP/Catherine Lai