【8月19日 AFP】アジアの都市国家シンガポールは近代的で国際的だが、少数派であるマレー系イスラム教徒の間で、女性器切除(FGM)は伝統的な慣習としてひっそりと続けられている。

 サザ・ファラディラ(Saza Faradilla)さん(26)は22歳の時、自分がまだ赤ん坊の頃に女性器を切除されていたことを知った。シンガポールの社会的価値観は保守的で、世界の大半で禁止されているFGMが今も違法とされていない。多くの女性は10代以降になるまで、自分がFGMを受けたことに気付かない。

「裏切られた気持ちでした」とサザさんはAFPに語った。親戚の少女のFGMに抗議して初めて、自分も同じ目に遭っていたことを知った。「とてもショックで、自分の権利がすごく踏みにじられた気がしました」

 母親にそのことを問い詰めると、「あなたに不倫してほしくないし、清潔でいてほしいから」という答えが返ってきた。「それに、宗教的な教えだから」とも言われた。

 サザさんらイスラム教徒の女性を中心とするグループは、インスタグラム(Instagram)やパンフレットを使って昔からの慣習であるFGMに対する思い込みを正し、女性器を切除された人々をサポートするワークショップを運営している。

 しかし、タブー視されている話題に挑むことは困難を伴う。イスラム教徒として間違っていると非難され、家族に内緒で参加しているメンバーもいる。

 その上、マレー系社会では女性の性についてオープンに語りたがらない風潮が強く、取り組みはいっそう難しい。

 世界中で行われているFGMがどのくらいの規模なのかは不明だが、国連(UN)の推計によると、アフリカ、中東、アジアの31か国で少なくとも2億人の少女・女性が今なおこの処置を受けているとされている。

 イスラム教徒の中には、少女の健康や道徳的な成長のためにFGMが重要だと考える人や、伝統の一部として疑うことなく受け入れる人もいる。また、女性の性欲を減退させ、浮気をしにくくなると信じる人もいる。