【7月29日 AFP】2016年のリオデジャネイロ五輪以降、陸上競技で数多くの世界新記録樹立に貢献している「スーパーシューズ(super shoe)」。純粋主義者から軽蔑され、技術革新者からはあがめられながら、今後も陸上競技のトラックとロードの勢力図を変えていくだろうと専門家はみている。

 30日から始まる東京五輪の陸上競技では、多くの出場者が生体力学の粋を集めた超軽量のシューズを着用する。これらのシューズは、硬いプレートと一歩一歩に推進力を与える特別なフォーム素材の構造になっている。

 スーパーシューズの開発は、米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)が厚底シューズで先陣を切った。メカニカルドーピング(機械ドーピング)に等しいと批判する人もいる一方で、数十年にわたるランニングシューズの停滞を打ち破る革命的な進歩だと称賛する声もある。

 米ミシガン大学(University of Michigan)の生体力学とスポーツパフォーマンス研究者で、ランニングシューズの技術に関する専門家でもあるジェフ・バーンズ(Geoff Burns)氏は、AFPに対して「新世代のシューズは、陸上競技の進歩を支える要素として容認する人もいるようです。(スーパー)シューズを禁止せよと主張する人のことをあまり聞かなくなったのはたしかです」と語った。

 米国を拠点に活動するジャーナリストで、ランニングシューズに関する研究著書もあるブライアン・メッツラー(Brian Metzler)氏は、スーパーシューズが以前より広く受け入れられているとの見解を示し、「すべてのブランドがナイキに追いついたからです。関連する基本的な技術の理解が深まりました」と述べた。

「容認する上での重要な要素は、公平な競争条件が確保され、シューズによって追加的なエネルギーが生まれないこと。その代わり、ランナーが一歩ごとにかける力のエネルギーリターンが大きくなることです」

 1968年のボストン・マラソン(Boston Marathon)で優勝し、米誌「ランナーズ・ワールド(Runner’s World)」の元編集長も務めたアンビー・バーフット(Amby Burfoot)氏によると、アスリートたちは「速く走ることだけに気を使っています。ライバルに後れを取らないためには、製造元がどこであろうと、新しいシューズを履く必要があると実感している」と話す。

「これからの速いパフォーマンスをどう扱うかの議論は、スポーツ歴史家か、スポーツ統計学者に委ねられている」