【7月28日 AFP】27日に行われた東京五輪の柔道男子81キロ級決勝で、永瀬貴規(Takanori Nagase)に敗れはしたものの、銀メダルを獲得したサイード・モラエイ(Saeid Mollaei、モンゴル)が、2019年にイランから亡命したときに「新しい人生を始めた」と語った。

 29歳のモラエイは、イランの選手として出場していた2019年の世界柔道選手権(World Judo Championships 2019)で、イラン柔道連盟(IRIJF)からイスラエルのサギ・ムキ(Sagi Muki)との対戦を回避するため、試合を放棄するよう指示された。

 これにより、IRIJFは国際柔道連盟(IJF)から資格停止処分とされたが、今年3月にスポーツ仲裁裁判所(CAS)によって処分は取り消された。モラエイは亡命して難民選手となった後、モンゴル国籍を得て大会に出場するようになり、今年2月にはイスラエルで行われた大会に出場した際、「兄弟」と呼ぶムキと顔を合わせる機会もあった。

「自分はすべてを捨てて、新しい人生を始めた」と話したモラエイは、「以前のことはほとんど忘れた。五輪でメダルを獲得したことは重要ではない。自分は素晴らしい選手仲間に囲まれている。モンゴルの人たちは優しくてとても温かいから、モンゴルと国民のためにメダルを取れたのがとてもうれしい」と続けた。

 イスラエルを国家として承認していないイランでは、選手が試合を放棄する、大会出場を見送るなどの方法でイスラエル勢との対戦を避け、その行動が幹部から称賛されるのが通例になっている。特に有名なのがIRIJFの現会長を務めるアラシュ・ミレスマイリ(Arash Miresmaeili)氏で、世界柔道で2回優勝しているミレスマイリ氏は、2004年のアテネ五輪で、イスラエル選手との対戦前の計量に減量をせずに臨み、失格になった。

 モラエイはイラン代表として出場した2018年の世界柔道で金メダルを獲得している。(c)AFP