【9月2日 AFP】1日に閉幕した世界柔道選手権(World Judo Championships 2019)で、わざと負けるよう祖国から圧力があったことを明かしたイランのサイード・モラエイ(Saeid Mollaei)に対して、国際柔道連盟(IJF)が支援を申し出ている。IJFはモラエイに、イラン代表とは異なる立場で2020年東京五輪に出場することを提案している。

 この問題は、IJFのマリアス・ビゼール(Marius Vizer)会長が日本メディアに明かしたもので、世界柔道の男子81キロ級でマティアス・カス(Matthias Casse、ベルギー)との準決勝に進出したモラエイとその家族に対し、イラン当局から準決勝の出場を放棄し、同じく勝ち上がっていたイスラエルのサギ・ムキ(Sagi Muki)との対戦を避けるよう指令があったと本人がIJFに訴え出たという。

 イランはイスラエルを国家と認めておらず、イランのパスポートには、国民は「占領下パレスチナへの渡航資格を有さない」と赤の太字で注記されている。前回金メダリストのモラエイは結局、下馬評有利とみられていた準決勝に出場したものの敗戦。ムキは決勝に進出して金メダルを獲得した。

 こうした状況を受けて、ビゼール会長はモラエイへの支援を約束。AFPに対して「選手を守るのがわれわれの使命。それは明らかだ」「モラエイが五輪に出場できるよう、全力を尽くしていく。いくつかある選択肢を検討し、そのうち一つを選んで五輪出場に適用することになるだろう」と話した。

 朝日新聞(Asahi Shimbun)は、難民選手団の一員としての出場を望んでいるという会長の言葉を報じている。一方、身の安全のためドイツ・ベルリンに滞在しているモラエイは、英国のペルシャ語のテレビチャンネル「イラン・インターナショナル(Iran International)」に対して、中立の立場で出場したい考えを示唆している。

「ドイツビザを持っているので、臆測を避けるためドイツにいる」「家族を危険にさらすのは神がお許しにならないだろうと思った。それでも自分は国に尽くす身だし、立場がイラン代表だろうと、中立だろうと、僕が手に入れるメダルはイランのものだ」「僕が今後イラン代表として戦うことは、残念ながら不可能かもしれないが、これまで一生懸命に練習してきたのは、わざと負けてみせることに我慢するためじゃない」

 ビゼール会長は「何よりもまず、モラエイが現役を続行し、東京五輪に出場できるよう全力で支援する」と強調し、緊急会合を開いてモラエイと家族への圧力や脅迫が本当にあったのかを調査した上で、場合によってはイランの柔道連盟に制裁を科すことを明かした。2日中には、IJFとして声明を出す予定だという。(c)AFP