【7月23日 東方新報】中国の2大都市・北京と上海を結ぶ高速鉄道「京滬高速鉄路」が開通10周年を迎えた。これまで約120万本が運行し、中国の総人口に近い約13億5000万人が乗車。走行距離は赤道約4周分の15億8000万キロに上る。

 京滬高速鉄道は2011年6月30日に開業。「京」は北京、「滬」は上海を指す。北京南駅(Beijingnan Railway Station)から出発した一番列車には当時の温家宝(Wen Jiabao)首相も乗車した。北京南駅から上海虹橋駅まで24駅あり、北京市、天津市(Tianjin)、河北省(Hebei)、山東省(Shandong)、江蘇省(Jiangsu)、安徽省(Anhui)、上海市を通過する。路線距離は1318キロ、最高速度は世界最速の350キロに達する。運転間隔は最短4分で「中国で最も忙しい高速鉄道」として知られる。

 北京・天津・河北エリアと上海周辺の長江デルタ地域の2つの巨大経済都市圏を結び、さらにその間の沿線開発を促進する「ゴールデンベルト」の役割を果たしてきた。

「高速鉄道が建設される前、この一帯はいくつもの村が集まった巨大な田園地帯でした」

 山東省済南市(Jinan)淮陰区(Huaiyin)発展改革局の王東(Wang Dong)局長はそう振り返る。済南西駅の誕生により人、モノ、資本が集まり、医療、教育、科学研究などの産業都市に発展した。開通当初の2011年、済南市の域内総生産(GDP)は4406億元(約7兆4348億円)だったが、2020年には1兆140億元(約17兆1100億円)に拡大。年間GDPが1兆元(約17兆円)を超える大都市「1兆元クラブ」に仲間入りを果たした(2020年段階で済南市を含め全国で23都市)。

 儒学の祖・孔子(Confucius)の故郷、山東省曲阜市(Qufu)では曲阜東駅(Qufu East Railway Station)の開設により、孔子(こうし)をまつった孔子廟(こうしびょう)、邸宅の孔府、墓地の孔林を合わせた「三孔」への観光客が増加した。観光客の平均滞在日数は10年前の0.5日から1.4日に増え、「日帰りか通過する観光地」から「1泊する観光地」に変化した。地元の旅行会社は47社に増え、ホテルも続々と進出した。

 江蘇省南京市(Nanjing)玉花台区(Yuhuatai)は南京南駅(Nanjingnan Station)の登場により産業集積が加速。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、Huawei)や中興通訊(ZTE)など700社以上のハイテク企業、3000社以上のソフトウエア企業が集まる。創業10年未満で評価額が10億ドル(約1095億円)以上に発展した非上場の「ユニコーン企業」、急成長して多くの雇用を創出する「ガゼル企業」も登場している。

 玉花台区の幹部、凌向前(Ling Xiangqiang)氏は「インターネット時代が到来しても、鉄道の役割はやはり大きい」と話す。

 京滬高速鉄道は中国の国営鉄道の1%の走行距離で5.6%の旅客を輸送。年間乗車率は約80%で、「中国で最も収益性の高い高速鉄道」の称号を得ている。また、低炭素、省エネ、環境保護のモデルにもなっており、年間約200万トンの二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献している。京滬高速鉄道は中国の経済、社会の成長を象徴する存在として今日も猛スピードで走り続けている。(c)東方新報/AFPBB News