【6月26日 AFP】米フロリダ州で24日に12階建ての集合住宅の一部が崩落した事故の原因を解明する調査が進められているが、主な原因として、安全性の審査に先立って工事が行われていたことと、建物が立っている場所で地盤沈下が確認されていたことの二つが挙げられている。

 1981年に建設された集合住宅「チャンプレイン・タワーズ・サウス(Champlain Towers South)」は、マイアミデード(Miami-Dade)郡の安全規制に従って今年、検査を受けることになっており、その一環で屋上の工事が行われていた。

 郡の職員らは、この集合住宅で工事が行われていたことは認めたが、南棟が崩落し、55戸に当たる部分ががれきと化した事故との因果関係を示すものではないと強調した。

 だが、ここに来て注目されているのは、米フロリダ国際大学(Florida International University)のシモン・ウドウィンスキ(Shimon Wdowinski)教授(環境学)が主導した研究だ。人工衛星のレーダーによる解析データに基づいて行われた同氏の研究は、1993年から1999年の間にこの場所で地盤沈下の兆候があったとしている。

 ウドウィンスキ氏は、集合住宅が1990年代に動いたことが確認されたとして、「非常にわずかで年に2ミリ程度だが、それでも人工衛星には検知される」と説明。今回発生したのは、地面の陥没というよりは地盤沈下の「ゆっくりとしたプロセス」だと米CNNに述べている。

 フロリダ国際大学はウェブサイト上で、「地盤沈下だけでは、建物の倒壊には至らない可能性が高い」と注記している。

 一方、ニューヨークのコロンビア大学(Columbia University)教授でコンサルティングエンジニアでもあるマシス・レビー(Matthys Levy)氏は米紙USAトゥデー(USA Today)に対し、検出された地盤沈下がわずかでも、影響を及ぼし得ると述べている。

 レビー氏は、「1ミリは小さな数字に思えるかもしれないが、長年積み重なると大きな数字になる」と話し、建物の一部がまだ立っていることが重大な意味を持ち得ると指摘。

 建物の一部の土台はしっかりしていて、他の部分がそうではない場合、床スラブ(建築物などに用いる厚い床板)にゆがみが生じ、「突然、亀裂が入り、割れて崩壊してしまう」と説明した。

 その結果、2001年9月11日にニューヨークで発生した米同時多発攻撃のように、進行性崩壊と呼ばれる事態に陥る可能性がある。

 米メディアはこれ以外にも、2015年に区分所有者の一人が裁判を起こし、集合住宅の管理者が外壁のメンテナンスを怠ったため、水漏れやひび割れが起きたと訴えていたと報じている。(c)AFP