【7月5日 AFP】クウェートの実業家ジャセム・ブアバス(Jassem Buabbas)さんは長年、ペットの餌として「スーパーワーム」を養殖してきた。そして今は、これが湾岸地域に暮らす人々の食卓に乗ることに期待を寄せている。

 首都クウェート市郊外の暗い小さな部屋で、小麦ふすまとトウモロコシの粉を敷き詰めた透明な容器にブアバスさんはゴミムシダマシの幼虫を入れる。この幼虫はタンパク質が豊富に含まれることで広く知られている。別の容器には繁殖目的で成虫を入れた。

「私の望みは、この幼虫が人間にとっての代替食品として成功すること」とブアバスさんはAFPに語る。

 昆虫を食べる習慣は世界各地にあり、アフリカ、アジア、中南米のおよそ20億人が約1000種の虫を食用にしていると考えられている。

 こうした伝統的な習慣の他にも、コオロギのパスタやゴミムシダマシのスムージーなど、世界各地の都市で昆虫食は食の最新トレンドにもなっている。食用昆虫は、これまでのタンパク源に取って代わる持続可能な食料として紹介されているのだ。

 一方、一部の湾岸諸国には、時に異常発生するイナゴを乾燥させ、焼いて食べる習慣がある。イナゴは珍味と考えられているが、近年はそうした風潮は減少傾向にある。

■食のトレンドと規制

 クウェートでは、人間の食用としてスーパーワームは承認されていない。

 それでもブアバスさんは、ペットフード事業にとどまらず、湾岸地域初となる虫料理を提供する飲食店の実現を目指している。現在はさまざまなレシピを試しながら、クウェート当局への許可申請に向けて準備を進めている。

 欧州食品安全機関(EFSA)は5月、乾燥ミールワーム(チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫)を人間が消費しても安全との判断を下した。食のトレンドに規制が追い付きつつあるのだ。

 ブアバスさんは通常、3か月で3000~6000匹の幼虫を育てるが、最も多い時には1万匹に達することもある。

 体長6センチ、重さ1グラムほどに育つと、スーパーワームは商品として売り出すことができる。ここまで育てるのには約90日かかる。販売価格は、25匹で3ドル(約330円)だ。

 ソーシャルメディアでペット向けのビジネスを展開しながら、スーパーワームを使った料理のレシピに取り組むブアバスさん。郷土料理のエッセンスを取り入れる考えがあると話すが、料理の味について尋ねると「知らない」との答えが返ってきた。自分では、まだ食べたことがないというのだ。(c)AFP/Salima Lebel