【6月23日 東方新報】「産業のコメ」といわれる半導体が世界的に不足し、各国の産業に大きな影響を与えている。特に、半導体チップを多く必要とする新エネルギー車(NEV)の普及を進める中国の自動車産業へのダメージが大きい。NEVの新車を心待ちにする市民が「いつまでたっても車が来ない」と嘆いている。

 太陽電池の国産化率は100%、電気自動車(EV)は95%、スマートフォンは85%など、先端産業で国産化が進む中国。だが、EVやスマホに欠かせない半導体自給率は、マッキンゼーのリポートによると5%にすぎない。中国政府が掲げる経済戦略ロードマップ「中国製造2025」では半導体自給率を「2020年までに40%、2025年までに70%に引き上げる」としているが、すでに目標から大きく離れてしまった。半導体ウエハーなどの材料品や半導体製造装置、測定・検査用機器の多くは米国、日本、台湾などに頼っている状況が続いている。

 自動車は1台につき約100個の半導体チップを搭載しており、「走る半導体」といえる。EVとなると、電子機器の動きを制御する精密な車載用半導体はさらに多く必要となる。

 北京市では今年から、車を持っていない家庭でEVを購入する消費者に優先的にナンバープレートを交付する政策を導入した。北京では交通渋滞や大気汚染が激しいため、ナンバープレートは枚数を制限しており、車を購入してもナンバーがなければ走ることができない。抽選でナンバーが当たり、夢のマイカーを手に入れるため高額のEVを購入したのに、「2か月以上待っても、まだ車が来ない」と嘆く市民が少なくない。半導体チップの相場は通常の5倍に跳ね上がっており、中国の自動車メーカーは「半導体チップが手に入らないだけでなく、手に入るとしても買えない」状態となっている。

 中国自動車流通協会の羅磊(Luo Lei)副事務局長は「半導体不足は高級車やNEVに大きな影響を与えている」と話す。

 中国はNEVを経済成長にとって重要な産業と位置付けると同時に、環境汚染を改善する「一石二鳥」の役割を期待している。また、中国の習近平(Xi Jinping)国家主席は昨年9月の国連総会で、二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに減少に転じさせると表明しており、NEVの普及は政治課題でもある。半導体不足が長引けば、中国の国家戦略にすら影響を与えかねない事態となる。(c)東方新報/AFPBB News