【10月31日 東方新報】中国初の「チップ大学」と呼ばれる南京集積回路(IC)大学が22日、南京市(Nanjing)江北新区(Jiangbei New Area)に設立された。通常の大学と異なり、IC産業の人材を育てるため企業と教育機関が一体となって設立した「即戦力養成大学」だ。

 IC設計自動化(設計者が要求仕様を指定するとコンピューターが設計案を自動的に考える)、マイクロエレクトロニクス、コンピューター汎用(はんよう)中央演算処理装置(CPU)の開発など、大学のすべての専攻はICの技術・設計に特化している。華為技術(ファーウェイ、Huawei)傘下の海思(HiSilicon)や「中芯国際集成電路製造(SMIC)など大手半導体企業が協力し、現役のエンジニアが講師となって理論と実践を結びつけた授業を行う。中国メディアの取材に対し、これから大学に通う学生たちは「これ以上の教師はいない。最先端の技術を学ぶことができます」と期待している。

 中国電子情報産業発展研究所がまとめた「中国IC産業人材白書」によると、中国のIC産業従事者は2019年で51.2万人。前年比で11%増、平均年収も4.8%上昇しているが人材供給が追いついておらず、2022年段階でも25万人が不足するとみている。清華大学(Tsinghua University)電子工程学部の周祖成(Zhou Zucheng)教授は「中国と米国の競争とは、すなわち人材育成の競争だ」と指摘している。

 中国は世界最大の半導体市場に発展しているが、2019年で中国企業による製品供給は15.8%にとどまり、84.2%は外国企業頼み。CPUやハイエンドチップは海外に大きく依存しているのが現状だ。中国にとって半導体は輸入額で最大の製品であり、その額は毎年3000億ドル(約31兆4280億円)に上る。また、米国は中国との経済摩擦で、中国企業に半導体製品の供給を制限する措置を取っており、半導体製品の自国開発がより急務となっている。

 人工知能(AI)や第6世代移動通信システム(6G)、インターネットと常時接続したコネクテッドカー、量子コンピューターなど、中国が今後の成長戦略と位置づけている産業にはICが欠かせない。「デスバレー(死の谷)」と呼ばれる研究開発における難関・障壁を克服するため、多くの人材を必要としている。南京集積回路大学の存在自体が、「中国経済を発展させるIC」となるかが注目されている。(c)東方新報/AFPBB News