■「距離を保つ」

 香港と中国の両当局は、今回の逮捕はメディア攻撃ではないと主張している。

 香港保安局の李家超(John Lee)局長は、蘋果日報は「異端」で、他のメディアとは違う「犯罪組織」であり「その行為は通常の報道業務とは全く別物だ」と言う。さらに蘋果日報は「国家安全保障を脅かす行為の道具として、疑わしいやり方でジャーナリズムを利用しようとしている。通常のジャーナリストは彼らとは異なる。彼らと関わりを持たず、距離を保つべきだ」と同氏は主張する。

 香港がメディアの中心地でなくなる日は近いという懸念はすでに高まっていたが、李氏の発言はそれを少しも和らげるものではなかった。

 香港大学でジャーナリズムを教えるシャロン・ファスト(Sharron Fast)氏は、李氏の発言について「不吉」であると同時に曖昧だと指摘する。「制裁や不買運動に関する事態の展開を報道する中で、何が外国勢力との結託による共謀に当たるのか、全く明確にされていない」

 香港記者協会(Hong Kong Journalists Association)は、李氏の発言が「ジャーナリストの間に恐れとパニックを拡散した」と指摘する。

 同協会によると、国安法は今や「国家安全保障への脅威とみなされる記事や論説を発表したとして、メディア機関の幹部やジャーナリストらを起訴する武器」となっている。

 香港外国記者会(Foreign Correspondents' Club, Hong Kong)は、蘋果日報幹部の逮捕は「香港の独立メディアを脅かす役割を果たし、報道の自由に水を差すものだ」と非難した。