■「病気でも働かされる」

 国際NPO「環境正義財団(Environmental Justice Foundation)」は、台湾のはえ縄漁船で働くインドネシア人を調査し、昨年、その結果を発表した。それによると、はえ縄漁船の25%で身体的な虐待、82%で過度な残業、92%で減給が行われていた。

 同財団に所属するインドネシア在住のモハマド・ロムドニ(Mohamad Romdoni)氏は、台湾船の労働条件は、世界最大の漁船団を擁する中国に比べるとわずかにましだが、「それでもひどい」と語る。「食べ物をかめてのみ込める船員は、病気でも働かされる」

 マニラのNPO「国際海員行動センター(International Seafarers Action Center)」を率いるエドウィン・デラ・クルス(Edwin Dela Cruz)氏は、台湾漁船の労働条件について端的にこう指摘した。「現代の奴隷労働だ」

 フィリピン人船員のマルシアル・ガブテロ(Marcial Gabutero)さん(27)が長期操業から戻ると、妻は家を出ていた。しかも、あっせん業者が支払ったのは、月給250ドル(約2万7000円)の5分の1のみだった。

 ガブテロさんは、船上ではほうきの柄でよく殴られたが、抗議はしなかったと言う。「私たちにはどうすることもできず、契約が終わるまで耐えるしかなかった」

 世界の漁船上の虐待を監視するNGO連合「水産ワーキンググループ(Seafood Working Group)」の推定によれば、台湾の遠洋漁船では約2万3000人が働いている。

 同連合は今年、米政府の人身売買年次報告書で台湾を降格するよう勧告。出稼ぎ漁船員が被っている賃金削減や強制労働、殺人、海上での行方不明事例があると指摘した。