【6月1日 AFP】東南アジア諸国の多くは、昨年の新型コロナウイルス流行第1波の時、迅速な国境封鎖や規制導入によって、比較的感染者が少ないまま乗り切れた。

 しかし、感染力の強い変異株が流行する今、ワクチン普及の遅れや規制疲れによって、新たな感染の波に襲われている。

■深刻なマレーシア

 中でも、1日から全国的なロックダウン(都市封鎖)が始まったマレーシアは深刻だ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による累計死者数は人口3200万人に対し約2800人だが、5月だけでその40%以上を占めている。累計感染者数は57万人以上で、先週は1日当たりの記録更新が続いた。

 イスラム教徒が大多数を占めるマレーシアで、変異株に加えて感染拡大の要因となったのは、断食月ラマダン(Ramadan)と、その終わりを祝う大祭「イード・アル・フィトル(Eid al-Fitr)」期間中の集まりだ。こうした集まりでは新型コロナ対策の規則が守られないことが多い。

 当局が「全面的なロックダウン」と称する措置では、スーパーマーケットや病院など「必要不可欠な営業」のみが可能となる。必要最小限な外出のみが認められ、ほとんどの学校が閉鎖される。

 また、移動については国内の大半の地域で数か月前から既に禁止されている。

 こうした中、少なくとも1回のワクチン接種を受けた人は人口の6%にも満たない。

■ベトナム、タイ、シンガポール、フィリピン、インドネシア

 ベトナムは昨年、新型コロナの感染を抑え込んでいると評価されたが、ここ1か月で感染者数が2倍以上に増加している。一部の空港では国際線搭乗客の入国が一時停止され、ホーチミン(Ho Chi Minh)では対人距離の確保を求める措置が講じられている。

 ベトナム当局は先週末、英国とインドでそれぞれ最初に検出された変異株の混合型である「ハイブリッド株」が確認されたとして警戒を促したが、その後、さらに調べる必要があると発表した。

 タイでは過密状態の刑務所で感染が急拡大している他、1日当たりの新規感染者が4000人を超えている。

 富裕国のシンガポールではこの数か月、感染はほとんど確認されていなかった。だが、5月に入り感染者が増加したため、当局は変異株への懸念を理由に規制を強化した。

 また、フィリピンでは3月に医療体制が切迫し、首都マニラとその周辺に新たなロックダウンが講じられたが、感染者数の減少に伴い制限は緩和されている。

 一方、インドネシアの感染状況は昨年の流行当初は深刻だったが、最近は比較的安定している。(c)AFP/M. Jegathesan