【5月25日 AFP】悪天候のため参加者21人が死亡した中国のクロスカントリーマラソン大会で、参加者6人を救った羊飼いの男性が英雄だと称賛されている。

 北西部甘粛(Gansu)省で22日に行われた100キロマラソンは、ひょうや雨、強風に見舞われ、参加者172人中21人が亡くなった。それから3日後の25日、中国版ツイッター(Twitter)の微博(ウェイボー、Weibo)には、「朱克銘(Zhu Keming)」という名前がトレンド入りした。

 朱さんは国営メディアに対し、22日昼ごろに羊を放牧していたところ、風が強くなり、雨が降ってきて、気温が急激に下がったと語った。

 朱さんは非常時用に衣服や食料を保管していた洞窟に避難したが、参加者の1人が立ち尽くしているのが目に留まり、様子を見に行った。けいれんを起こしているようだった。

 朱さんはこの参加者を洞窟に連れて戻り、凍えた手足をマッサージしてあげ、火をおこして服を乾かした。

 洞窟にはさらに4人の参加者がたどり着き、外に何人か取り残されていて、意識のない人もいると語った。

 朱さんは再び外に出て、ひょうと凍えるような寒さに耐えながら、地面に倒れている参加者を見つけると洞窟に運び、毛布でくるんで命を救った。

 中国では、朱さんの無私無欲の行動が称賛されている。だが、本人は国営メディアに対し、自分は「ごく普通のことをした普通の人間」だと語った。

 男女3人ずつ計6人を救出した朱さんだが、低体温症で亡くなったとされる人々を助けられなかったことを後悔している。

「救えなかった人がもっといた」と朱さん。息が絶えてしまっていた男性が2人いたが何もできなかったと話す。「申し訳なく思う」 (c)AFP