字幕:ピッチ外で食いつなぐ日々、ガボンのプロサッカー選手
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【5月28日 AFP】アフリカ中部ガボンの首都リーブルビルで、家の壁を塗装するガマンバ・スレイマン(Gamamba Souleimane)さん。スペインサッカーの強豪クラブ、レアル・マドリード(Real Madrid)のジャージーには、ペンキがはねている。
28歳の今、プロサッカー選手としてピークを迎えていたはずの彼が履いているのは、スパイクではなく作業靴だ。ボールを蹴る代わりに手にしているのは塗装ローラー。ただ暮らしを立てるために、サッカーをすることを諦めた。
「もちろんつらいです。続けていたかったのですが、ガボンでサッカーをしてもどうにもならないと気付いたんです」と言う。
小国だが石油資源に恵まれたガボン。サッカーを国の誇りとする人は増えている。
国の代表チームは英プレミアリーグ、アーセナル(Arsenal)のスターFW、ピエール・エメリク・オーバメヤン(Pierre-Emerick Aubameyang)選手に率いられ、アフリカ内でのランキングは18位。来年カメルーンで開催される大陸選手権アフリカネーションズカップ(Africa Cup of Nations)の出場権を獲得したばかりだ。
しかし、ガボンの国内クラブの選手らは給料の未払い、契約違反、さらに選手権の中断により、生計の維持に奮闘している。食料支援に頼るプロ選手もいる。
「新型コロナで息の根を止められてしまいました」とスレイマンさんは嘆く。「建築関係で働きだし、ピッチの上の8倍、稼いでいます」
加入していたクラブを「背信行為で訴えた」と言う。試合に出れば仕事になるはずだったが、2年間で支払いを受けたのは、たった5回。1回につき15万CFAフラン(約3万円)だった。
■コロナ禍で陥った「カオス」
「自分はサッカー以外に職があってラッキーです。でもチームメートのことを考えると…皆はごみのように扱われています」と怒るスレイマンさん。「人から見下され、食事したり衣服を買ったりする金もなく、家に帰るわずかなタクシー代のためにひれ伏さなければなりません」
ガボン・プロサッカー選手協会(ANFPG)のレミ・エバネガ(Remi Ebanega)会長は「コロナ以前も、ほとんどの選手は金銭的に極めて不安定だった。それが今ではカオスだ」と述べた。
2018年の同協会の調査によると、選手が支払いを受けたのは12か月中平均で2か月のみで、合計収入は約10万CFAフラン(約2万円)だった。
ガボンのプロサッカーは資金不足のため、数年にわたって長期中断が繰り返された。2018-19年シーズンは窮余の一策で、グループリーグ形式のリーグ戦とプレーオフを含めて2~3か月だけ開催された。
しかし、コロナウイルスが到来した2020年3月以来、全てのプロスポーツ競技は中止され、選手は収入の道を閉ざされた。
選手協会はガボン政府とサッカー連盟に試合を再開するよう、もしくは少なくとも、同国にいる約700人のプロ選手を援助するよう要請した。
「感染対策を順守しながらの試合再開を望んでいます」とガボンサッカー連盟(FEGAFOOT)のピエール・アラン・ムンゲンギ(Pierre Alain Mounguengui)会長はAFPに語った。さらに、選手らの環境改善を再開の条件とすべきだと強調した。
ムンゲンギ氏は、クラブが選手との契約を尊重していなかったと指摘し、いくつかの理由を挙げた。「市場が小さいためにスポンサー不足なこと、面白い試合が少ないこと、さらにファンのサポートもありません」。さらに「多くのクラブ予算の大部分を占める国からの補助金の支払いが遅れています」。
選手協会は現在、新しいキャリアに向けた選手の再訓練に焦点を合わせている。「しかし、ほとんどの選手が(職業)訓練を受けたことがありません。小学校を出たところで勉強をやめています」とエバネガ会長は言う。