【6月30日 AFP】東京五輪開幕を前に、ライフル射撃の選手やチームが日本特有の課題に直面している。世界でも特に厳しく銃火器が規制されている日本では、コーチすら選手の使う銃に触れられず、保持できる弾薬の数にも制限がある。

 ライフル射撃日本代表チームでコーチを務めるゴラン・マキシモビッチ(Goran Maksimovic)氏は、就任して初めて日本の銃刀法の厳しさを知り、自分が銃を撃つことはおろか、トリガーに指をかけることさえできないのに気づいた。

 1988年のソウル五輪、10メートルエアライフルで金メダルを獲得したマキシモビッチ氏は、「最初はとても驚いた」と話し、「コーチとしては非常に難しい。トリガーがなめらかに動くか、重すぎないかをチェックして、パーツの調整を手伝わなければならないときがあるからだ」と続けた。

 日本は銃をはじめ、さまざまな武器を規制してきた長い歴史を持つ国で、エアピストルを所持できるのは最大500人に抑えられている。現在、日本の銃刀法は世界最高レベルで厳しく、人口1億2500万人の国で、銃による死者の数は平均で年間一桁にとどまっている。

 銃所持の許可を得るには、日本国民でも長く複雑な手続きを経なくてはならず、外国人の場合はさらに難しい。そのためマクシモビッチ氏は日本人のアシスタントを介してチームを指導することを強いられている。

 それでも、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で1年延期になった五輪の開幕が近づく中、関係者は最悪の事態を回避するべく、いくつかの迂回(うかい)策を用意した。

 例えば、五輪期間中は選手が銃を手に持っている場合に限り、コーチが「簡単な修理」を行える。また、審判員が国際射撃連盟(ISSF)のルールに従って銃を扱い、弾薬を検査できるようにもルールが緩和された。

 日本ライフル射撃協会(NRAJ)の松丸喜一郎(Kiichiro Matsumaru)会長は、そのために複雑な手続きが必要だったことを明かし、「文句が出ないように、いろいろ行政や警察をはじめとして交渉をしたので、大丈夫なようになっている」と話しつつ、来日後に不便を感じれば「文句」が出てくる可能性はあると心配した。