【5月29日 AFP】展示されているのは、奴隷に罰としてはめられた鎖の足かせに、巨匠レンブラント(Rembrandt)による奴隷制で財を築いたオランダ人夫妻の肖像画──。オランダのアムステルダム国立美術館(Rijksmuseum)で現在、「奴隷制(Slavery)」と題し、同国の植民地支配をめぐる暗い過去をテーマにした画期的な企画展が開かれている。

 今月18日に開幕した展覧会は、オランダがスリナム、ブラジル、カリブ海(Caribbean Sea)諸国、アジア、南アフリカの奴隷制に関与した250年間を取り上げ、奴隷にされた人々や奴隷の所有者ら10人に焦点を当てている。

 アムステルダム国立美術館の歴史部の責任者、ファリカ・スメールデルス(Valika Smeulders)氏は内覧会でAFPの取材に応じ、「これは国の歴史なのです。一部の少数の人々だけではなく、私たち一人ひとりに関わる歴史です」と語った。

■捕まって焼き殺された奴隷の話も

 10人のうちの一人は、スリナムの農園の奴隷だったワリーさんだ。1707年の奴隷反乱に参加して逃亡したが、捕まって焼き殺された。
 
 ワリーさんに関する話の音声ガイダンスを担当したのはオランダ出身のキックボクシングの元世界チャンピオン、レミー・ボンヤスキー(Remy Bonjasky)さん。祖先は、同じ農園から逃亡したとされている。

 展示作品にはこの他、アムステルダムの富豪オーピエン・コピット(Oopjen Coppit)と夫のマーテン・ソールマンス(Marten Soolmans)の肖像画も。夫妻が1634年にレンブラントに依頼して描かせたもので、ソールマンス家はブラジルの奴隷農場による砂糖の精製で巨額の富を築いた。

 オランダはこれまで、奴隷貿易で果たした同国の役割について公式に謝罪したことはない。だがマルク・ルッテ(Mark Rutte)首相は昨年、「Black Lives Matter(黒人の命は大切)」抗議運動が広がる中、同国で人種差別の問題が続いていることを認めた。

 同展は、美術館や博物館に関する新型コロナウイルスの規制が解除され次第、一般公開されるが、当面はオンラインでの閲覧と、学校団体の見学のみ可能となっている。(c)AFP/ Danny KEMP