【5月29日 AFP】チャイナドレスを優美に着こなすサン・シュウジュ(Sang Xiuzhu)さん(76)。高齢インフルエンサーという意外な一団の一人だ。今、中国では高齢者が輝かしい老後の動画を引っ提げて、ソーシャルメディアに攻め込んでいる。

 サンさんは2年前から「ファッション・グランマ(Fashion Grandmas)」というグループに参加している。北京の街中をキャットウオークに変えるサンさんらの1分動画とライブ配信に、ファン数百万人が引き付けられている。

 エレガントな装いに加え、結婚や愛、人生についての深い知恵を織り交ぜて発信し、今や中国の経済とオンライン文化において不可欠な世代となりつつある。

「若いファンは、おしゃれで楽しい毎日を送っている私たちおばあちゃんを見て、年を取るのが怖くなくなったと言っています」とサンさん。

 急速に高齢化が進む中国。政府は引退生活を送る数千万人をどう養うかという大きな問題に直面している。

 だがこれは同時に、財政的余裕を持ちつつ老いを迎え、テクノロジーの商機を利用できる高齢者にとってはチャンスとなっている。

 そうした高齢者は長寿と娯楽、さまざまな商品を追い求め、みんなと同じようにスマートフォンにくぎ付けになっている。高齢者の年間消費は数十兆円に上ると推計されている。

「ファッション・グランマ」の主要メンバーは、50代後半から70代半ばまでの23人。自分たちが提供する動画のポップアップ広告やライブ配信の製品販売で収入を得ている。エージェントによると、配信開始から1分以内に200個売れた商品もある。

 動画は「美は若者だけのものではありません」とか「高齢者だってすてきに暮らせるのです!」といった、視聴者を元気づけるメッセージも発している。

 時には家庭内暴力を非難するなど、シリアスなメッセージもある。ある動画では、店の中で恋人の女性をたたこうとした男性の腕を怒った高齢の女性がつかみ、警備員に店から引きずり出すよう合図する。画面には「家庭内暴力は違法です」と文字が現れ、さらに「恥ずべき行為」だと続く。