【1月3日 AFP】リー・チャンミン(Li Changming)さんは70歳になる退職者。買ったばかりの華為技術(ファーウェイ、Huawei)の新型スマホにすこし戸惑っている。中国の為政者は、この最新機器こそ何百万もの年老いた中国人の消費を促すものと期待している。

 リーさんはモバイル講習会に迷わず申し込んだ。このコースは、成長著しいデジタル経済に多数の年金生活者を組み込もうとする中国の計画の一環である。

「まだ機能の全部は分からないけれど、学びたい」とスクリーンをタップしながら銀髪のリーさんは語った。「学ぶのに年齢は関係ない」

 中国南西部の都市・成都(Chengdu)で行われた講習会に集まった高齢者たちは、人気アプリや地図の使い方、設定変更について講師から、平易な言葉で説明を聞いた。

 中国経済は製造部門と政府投資に頼り過ぎてきた。現在は、経済のバランスを取るため、国内消費を伸ばす長期的な取り組みが進められている。その中心に電子商取引がある。

 今やアプリを介する取引が刻々と拡大、増加している。その代表格が、IT大手、騰訊控股(テンセント、Tencent)のウィーチャットペイ(WeChat Pay)と中国電子商取引最大手アリババ(Alibaba、阿里巴巴)の金融関連会社アントグループ(Ant Group)のアリペイ(Alipay)だ。

 この2強が、巨大な中国のオンライン決済業界を支配し、現金を過去の遺物としている。

■「スマホなしでは暮らせない」

 世界中のブランドがシルバー世代の財布を当てにし、各国政府が高齢者の貯蓄を経済に流入させ成長を促そうとしている。

 特に、中国の退職者は2025年までに3億人に達すると予測されている。調査会社「博聖軒(Daxue Consulting)」の推定では、同国の高齢者経済の規模が現在4兆9000億元(約78兆円)である。

 さらに政府によると、農村部の4Gネットワーク普及率は98%に上る。

 中国の退職者のほとんどが、拡大するモバイルサービスの利用に乗り気だ。銀行グループUBSは昨年、年配の消費者が若い世代に「すでに追いついている」との報告書を発表した。