【5月20日 AFP】米テキサス州の牧場主ボビー・ヘルマーズ(Bobby Helmers)さん(79)は、自身が所有する6基の巨大な風力発電のタービンのブレード(翼)が風を切る音に耳を傾けた。この広野にはかつて、採油ポンプが原油をくみ上げる音が響き渡っていた。

 1970~80年代にヒットしたテレビドラマ「ダラス(Dallas)」に登場する油田開発で財を成した大富豪のように、ヘルマーズさんは自分の土地に数十年間、油井を設置していた。しかし、原油が豊富なこのテキサス州でも、再生可能エネルギーはますます有望視されている。そうした中で、他の牧場主らと共に風力発電に乗り換えた。

 直径120メートルのタービンが、ヘルマーズさんの妻サンドラ(Sandra Helmers)さんの一家が3世代にわたり所有してきた牧場に導入されたのは3年前。タービンの静かさと新奇性にヘルマーズさんは今でも驚嘆している。

「ステットソン帽(つばの広いカウボーイハット)と馬は、キャップと小型トラックに取って代わられた」とヘルマーズさん。

 だが、牧場では今も畜牛を飼っている。大都市ダラス(Dallas)から南西約400キロのサンアンジェロ(San Angelo)で、ヘルマーズさん夫婦は従業員1人と125頭の肉牛を飼育している。だが現在、牧場の収益の半分は風力発電によるものだ。

 ヘルマーズさんの牧場から数キロ先の野原には、風力発電ファームの管理事務所があった。小さな建物の中で、ケビン・デフォー(Kevin DeFoor)さん(48)は10人前後のスタッフを率い、ヘルマーズさんの6基のタービンを含め、76基のタービンのメンテナンスを行っている。

「この地域が発展したのは、農業や牧場経営、石油のおかげ」だと元刑務所長のデフォーさんは言う。今は、この風力発電ファームを運営する仏エネルギー大手エンジー(ENGIE)の従業員として働いている。2007年に親族の中で初めて風力エネルギー産業に従事した。それ以来、この地域の風の安定性について、事あるごとに熱く語ってきた。

「うちのタービンが回っているのは、時間全体で見れば半分」とデフォーさん。米国の風力発電部門としては「素晴らしい実績」だと胸を張った。