■取引のトリック

「シャネル(Chanel)の黒いハンドバッグの裏地はピンク色」──高級品の決まり事について説明するチェン氏の言葉に、受講生らは聞き逃すまいと耳を傾ける。

 チェン氏は、ハンドバッグに特殊な紫外線を当てて、受講者らにIDカードを確認するよう促した。「二つの文字が見える。これがカギだ」と話し、このスキルは10年ほど前に日本で学んだと説明した。

 お金に余裕のある受講者ばかりだが、経歴はさまざまだ。上海から来たというファッション誌の元編集者や、コロナ禍で新たなスタートを目指すバーテンダーなどがいる。

 コピー商品の製造に関わっていたという受講者も数人いる。彼らは持ち前のスキルを生かし、それを伸ばして、いかがわしい仕事から足を洗うことを目指しているのだ。

■コピー商品をブロック

 製品を追跡できるマイクロチップの導入で、高級品の鑑定はハイテク化しつつある。仏LVMHモエヘネシー・ルイヴィトンにいたっては、ブロックチェーン技術の利用を明言している。

 ただしこれらのテクノロジーはまだ完成されてはおらず、これまでのアナログな手法が脅かされるとは考えていないとチェン氏は言う。「どんなテクノロジーも、破られる可能性はある」

「高級品の査定市場は、常に存在し続けるだろう。ただ、その方法が変化していく必要はある」 (c)AFP/Ye QIAN / Helen ROXBURGH