【4月28日 AFP】米フロリダ州の私立学校が、新型コロナウイルスワクチンを接種した人は周囲に危険を及ぼす可能性があるという誤った情報に基づき、接種した教師と生徒の接触を禁止した。米政府がワクチン接種を進める中、誤情報の危うさを顕著に示す例として批判が上がっている。

 セントナー・アカデミー(Centner Academy)は26日、共同創立者のレイラ・セントナー(Leila Centner)氏が保護者宛ての電子メールで、ワクチンを接種した人は「体から何かを発している可能性がある」として、周囲の人々、特に「女性と子どもの生殖器官や生殖能力、正常な成長と発達」に悪影響を及ぼす恐れがあると主張した。

 セントナー氏はこの誤った主張について、「まだ分かったばかりで研究されていない」と説明している。

 同校はさらに、「この実験的な薬が未接種者に影響を与えるかどうかについて、さらなる調査が行われるまで」接種を控えるべきだと主張し、年度末まで接種を待つようワクチンを未接種の教職員に促した。

 こうした主張はソーシャルメディアで拡散しているが、すでに専門家やファクトチェッカーによって否定されている。

 カナダ・サイモンフレーザー大学(Simon Fraser University)のジェイミー・スコット(Jamie Scott)名誉教授(分子免疫学)は、「ワクチンを接種した人が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を排出する証拠はない。どのワクチンも細胞内で作らせるのはスパイクタンパクのみで、ウイルスの他の成分を作らせることはない。つまり、ワクチンによって新型コロナウイルスが生成されることはあり得ない」と説明した。

 メールに対する保護者の意見は割れている。ある保護者はAFPに、「私たちは学校の決定を100%支持する」と語った。「この実験的ワクチンについてはあまり情報がなく、信用できない」

 別の保護者はNBC系列の地元テレビ局に、「彼らは『私の体は私が決める』(人工中絶制限の合法化に反対するスローガン)を強く支持しているのに、レイラ氏はそれとは真逆のことを教師に言っている。これでは『私の体は彼女が決める』だ」と語った。

 セントナー・アカデミーは元起業家のデビッド・セントナー(David Centner)氏と妻のレイラ氏が2018年に創立。公式サイトによると、生徒数は約300人、中等部の授業料は年間約3万ドル(約330万円)となっている。

 保護者へのメールを最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、セントナー夫妻はドナルド・トランプ(Donald Trump)陣営や共和党に多額の寄付をしてきたという。(c)AFP/Leila MACOR