ISS乗組員の健康を保つには? 航空宇宙医師に聞く
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■新型コロナウイルスについて
Q:飛行士は新型コロナウイルスワクチンの接種を完了しているが、それでも検査は必要?
A:飛行士らは隔離状態に置かれているが、最終的なPCR検査を2度実施した。これは、体内にウイルスを保有していないことを100%確認するためだ。
重力がない状態では、免疫システムの機能が低下する。通常は発症しない感染症にかかることもあれば、自分たちが普通に持っている細菌で発症することもある。
Q:乗組員は、1日2時間、運動器具を使って体調を維持しているが、こちらからも定期的に連絡を取っているのか?
A:週に一度、15分間、定例のビデオ通話を行っている。
ミッションの開始時に主にチェックするのは、1GからゼロGへの移行による宇宙酔い。脳にも若干の混乱が生じ、内耳と目に見えるものとの間に感覚混乱が起き、そのせいで嘔吐(おうと)することもある。
ミッションの後期には別の影響、特に心理状態や認知能力を調べる。ISSのような環境に滞在していると、非常に狭い場所にいるので、新しい刺激が得られない。そのために心理的な影響を受け、集中力が低下したり、情報を記憶するのが難しくなったりする。
Q:薬剤を十分に蓄えておく以外に、船内にはどんな医療機器が?
A:例えば、ヘマトクリット値(血液中に占める赤血球の割合)を分析することで、水分補給は十分か、循環器系でどんな変化が起きているかを知ることができる。
数年前、(宇宙飛行士に)血栓症が数件認められた。健康な人に起きるとは誰も予想していなかったが、地球上での人体の働きについても新たな知識が得られた。
現在は超音波の設備もあり、痛みなどの症状があれば、他の乗組員が超音波で調べ、血栓症の臨床例かどうかを判断できる。
飛行士の命や健康が実際に危険にさらされている場合は、緊急帰還させる準備を進める。幸いなことに、ISSが運用されてきた21年間でそんな事態は一度も起きていない。