■中国製品をボイコットするミャンマー国民

「軍事政権にとって、こうした抵抗は想定外だった」と指摘するのは、仏国際関係研究所(IFRI)アジア地域ディレクターのフランソワーズ・ニコラ(Francoise Nicolas)氏だ。ストライキを「リスクの高い賭け」と呼んだ。

 銀行がまひしているため、給料を受け取れない労働者も多く、ATM(現金自動預払機)も空っぽだ。衣料品業界は、クーデター前には非常に好調で約50万人が従事していたが、同じく崩壊しつつある。

 スウェーデンの服飾大手「H&M(へネス・アンド・マウリッツ)」や伊アパレル大手「ベネトン(Benetton)」などの外国企業は、ミャンマー企業への注文を控えていることを公表。欧米ブランドの仕事を請け負っている複数の中国系縫製工場が放火される事例も相次いだ。その結果、数千人の女性労働者は賃金を支払われないまま、故郷の村に帰る羽目になった。

 ミャンマー通貨チャットの価値が下落し、種子や肥料のコストが上がり、農家は収入減に苦しんでいる。

 さらに、ヤシ油、米、燃料油を含めた物価も上がり続けている。建設資材、医療機器、消費財は、通常は中国から輸入されているが、品切れが始まっている。

「中国の企業家は輸出に難色を示すようになった。ミャンマーの国民が、軍事政権を支持する中国政府を非難して、同国の製品をボイコットしているからだ」と、豪カーティン大学(Curtin University)のトウェ・トウェ・テイン(Htwe Htwe Thein)教授(国際ビジネス)は指摘する。