新たなアイデンティティー模索するグリーンランド先住民の若者たち
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【4月6日 AFP】腕や顔に彫った伝統的なタトゥーに、先住民イヌイット(Inuit)としての誇りがにじむ。そんなセクニングワック・ポールセン(Seqininnguaq Poulsen)さん(19)は、新しい文化的アイデンティティーを追求するグリーンランド(Greenland)の若い世代の一人だ。北極圏のデンマーク領である同島の独立も彼らの視野にある。
6日に自治議会選挙を実施するグリーンランドでは、住民約5万6000人の40%近くが25歳未満だ。
当地の若者は長い間、まん延する性的虐待、暴力、自殺およびアルコール依存と闘ってきた。
イヌイットはグリーンランド人口の9割を占めるが、アイデンティティーの問題を抱えてきた。彼らの伝統的な生き方は、1953年まで続いたデンマークによる植民地支配の時代、そしてそれ以後も、現代社会から影響を受け続けているのだ。
先住民のアーティストであり活動家でもあるポールセンさんは、国連(UN)の先住民の若者に関するサミットなど各種の国際的フォーラムでグリーンランドを代表してきた。研究者らがイヌイットの「リバイバル(復活)」と呼ぶ動きの一端を担っている。
彼女の頬とあごにある点線のタトゥーは、植民地化以前はイヌイットの成人の証しだった。手から前腕にかけてもイヌイットの伝統的な模様が描かれている。
ポールセンさんは、自分の文化と祖先を敬うためにおよそ1年前にタトゥーを入れた。
「私のイヌイットであることの誇りを、世界に知らせたかった」と彼女はグリーンランド政庁所在地のヌーク(Nuuk)でAFPに語った。彼女の名前セクニングワックは「美しい太陽」という意味だという。
「独立に向け精神的に備えるため、もっと力をつけないといけない。考え方を変える必要がある」と付け加えた。ポールセンさんは、自身の薬物乱用や自殺未遂、虐待的関係についても率直に明かしてきた。
「本当に体制を非植民地化したい。私たち独自のやり方、考え方に合わせないと。特に、学校制度を」
■「教育を受けた人が足りない」
高校を卒業したグリーンランド人は2人に1人しかいない。
選挙戦では、「教育制度が最大の争点となるべきだ。グリーンランドの若者に適合していない」と語るモーテン・ボーラー(Morten Boller)さん(21)。西部の町カンゲルルススアーク(Kangerlussuaq)出身のこの青年は、最近高校を卒業し、間もなく空港で働くための訓練をヌーク市で始める。
学業を続けたい若者のほとんどは村を去り、多くはデンマークへ向かう。
「グリーンランドには教育を受けた人が足りず、デンマークから働きに来る。だから、被害者と救済者の関係のような心理状態なのだ」とポールセンさんは指摘する。彼女自身、海外で勉強したいと思っているが、いずれグリーンランドに戻る計画だ。
グリーンランド大学(University of Greenland)の経済学者ビーワー・ポぺル(Birger Poppel)氏は、学校制度がグリーンランドの若者の特別なニーズに対応すべきだと言う。
例えば、学校制度が組み込むべきは、「放置と虐待で心に傷を負った子どもたちの学習障害に関する研究から得た知見」だと主張した。
2018年の政府報告によると、グリーンランドの3人に1人以上は性的虐待の被害者であるという。大抵は幼児期の被害だ。