【7月6日 AFP】デンマーク領グリーンランド(Greenland)では、人口5万6000人の3人に1人近くが子どものときに性的虐待の被害に遭ったことがあり、緊急度の高い懸案課題となっている。だが、被害者、加害者、虐待の事実を知る人々や社会がそろって口を閉ざす「沈黙の共謀」と呼ばれる空気が根強いことが問題を解決する上で妨げとなっている。

 このほどデンマークの公営テレビ局が性的虐待に関するドキュメンタリーを放映したことでこの問題に注目が集まり、自治政府も問題解決に取り組むことを改めて表明した。

 番組の中である女性は、「私は6歳ぐらいだった…夜中に誰かに体を触られていて目が覚めた。手と膝を縛られていて、虐待を受けた」と語った。この女性はグリーンランド南東部の村タシーラク(Tasiilaq)に住んでいるが、番組によると、村に住む60歳以下の成人の半数近くが子どもの頃に性的虐待を受けた経験があるという。

 グリーンランドの国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)の幹部サラ・オルスビグ(Sara Olsvig)氏は、児童性的虐待は薬物とアルコール摂取との関連性が非常に高く、暴力的な家庭に多くみられると指摘し、子どもの権利に対する認識が浸透していないと続けた。

 だが、グリーンランドでは性的虐待については口にするべきではないという意識が根強く、このことが問題を複雑にしている。

 タシーラクに住む別の女性は、性的虐待の被害者の支援を求めて嘆願を始めたが、村の名前を汚したとして殺害の脅しを受けたという。