【3月31日 東方新報】社会主義国家の中国では「迷信」として認められていない占いが、若者の間で人気が高まっている。インターネット上で星占いやタロット占いのサイトが乱立し、悪質な詐欺事件も起きている。

「私は受験に成功するでしょうか」「恋人ができるタイミングを知りたい」「転職すべきか、会社にとどまって昇進を狙うべきか」。ネット上の占いサイトでは、こうした相談の書き込みが相次いでいる。ある占星術師のサイトには数千万人のフォロワーがつき、タロット占い師の生放送動画では数百万人の視聴者が占いの結果を見守っている。

 日本のテレビでは朝の情報番組で「今日の○○座の運勢は」「ラッキーカラーは○○」と紹介したり、新聞や雑誌にも占いが掲載されたりしているのが常識だが、「科学的社会主義」の立場を取る中国ではマスコミの情報に占いの類いは一切無く、路上の占い師や「占い師○○の部屋」といった店舗を見ることはない。

 しかし近年はネット上で占いサイトが次々と登場。ある星占いサイトのユーザーは大半が19歳から34歳で、中でも19歳から24歳が50%以上を占めている。

 占いの「見料」は幅があり、10元(約166円)程度の安いものや1万元(約16万7000円)を超えるものも。サイトの書き込みで「ここなら安心」という評価を見て選ぶユーザーが多いが、「ネット水軍」と呼ばれる大量のサクラの書き込みもあり、誘導されて高い料金の占いを選ぶ人もいる。

 重慶市(Chongqing)の警察は2019年、ネット占いの詐欺グループを摘発。グループが稼いだ金額は2400万元(約4億円)を超えていた。今年6月には江蘇省(Jiangsu)の警察がオンライン占いを口実にした金銭詐欺事件を摘発した。1万人以上がだまされ、被害総額は5500万元(約9億1840万円)に上った。

 南京大学法学院の王会清(Wang Huiqing)博士は「いかなる組織や個人もインターネットで封建的な迷信活動をすることは禁止すべきだ」と提言。関連法を整備し、処罰を強化すべきだと訴える。

 ただ、若者の間で占いが流行するのは、日本以上に激しい受験競争や、就職や結婚にまつわる親からのプレッシャー、転職が当たり前で常にビジネス上の成否が問われるといった社会状況が背景にある。超常的な力に「答え」や「助け」を求めたくなる心理は万国共通とも言え、単なる規制だけでは若者の占い熱を抑えることは難しそうだ。(c)東方新報/AFPBB News