■大統領の警護の兵士を目にした女性たちから悲鳴

 エチオピア軍はコメントの要請には応じていない。エチオピア・エリトリア両政府は、ティグレ州へのエリトリア兵侵入を否定している。

 通信手段が遮断され、人道支援団体やメディアによる現地入りが厳しく制限されているため、レイプの実態はなかなか表面化しない。それでも複数の当局者が、レイプは起きていると認めている。ただし、責任の所在の特定は避けている。

 フィルサン・アブドラヒ(Filsan Abdullahi)女性相はツイッター(Twitter)で2月、ティグレでの性暴力を調べる特別調査団が「残念ながら、レイプは疑う余地なく起きていることを確認した」と明らかにした。

 その1週間後、エチオピア初の女性大統領サヘレウォルク・ゼウデ(Sahle-Work Zewde)氏は、ティアハスさんら、レイプのサバイバーが治療を受けている保護施設を訪問した。

「話す勇気のある人々と話をし、話せない人の目を見つめて多くを知った」と大統領は述べた。「端的に言えば、彼女らが味わった体験はすさまじいものだった」

 しかし、大統領の訪問によって対立が明らかになる局面もあった。

 大統領に先駆けて警護の兵士が施設にやって来ると、サバイバーの女性らは再びレイプ被害を受けるのではないかと考え、恐怖で泣き叫んだと施設の職員らは言う。大半の女性は大統領との面会を拒否した。

「(大統領が)来ると、私たちは泣き、悲鳴を上げました」とアブレヘトさんは振り返る。アブレヘトさんは、ティグレ州のウクロ(Wukro)という町の近くでバスから降ろされ、軍の駐屯地で8日間にわたりエチオピアとエリトリアの兵士にレイプされたとAFPに語った。「彼女(サヘレウォルク大統領)と話すのは絶対嫌」

 女性権利活動家のサバ氏は、紛争で分断が深まり、「ティグレの人々からは、自分たちはもはやエチオピア人とは思えないという声が出ている」と話す。「レイプは、ティグレの人々に対する侮辱や差別で、ティグレの人々には尊厳がなく、下の立場の人間だと示しているのだと受け止められている」