【3月24日 東方新報】中国で伝統的に親しまれている花というと牡丹(ボタン)と梅が代表的だが、最近は桜の人気が急上昇している。今月は各地で桜が満開を迎え、「密」を避けながら観光客が花見を楽しんでいる。桜の名所は年々増えており、町おこしにもつながっている。

 上海市で一番の桜の名所といわれる顧村公園では12日から「上海桜祭り」が始まった。毎年植樹が行われ桜は増え続けており、現在は110品種、1万4000本に上る。園内は見渡す限り白やピンクの花びらが開き、「桜の海」と称されるほど。昨年はコロナ禍で祭りが中止となったため、2年ぶりの「再会」を多くの市民や観光客が喜んでいる。

「中国10大桜の観賞地」の1つに数えられる南京市(Nanjing)の玄武湖周辺では、1000年以上の歴史を持つ鶏鳴寺から市役所まで数百メートルにわたる桜並木(さくらなみき)が有名だ。桜が見頃を迎えて初の週末となった13日は夕方までに6万人も詰めかけ、警察が交通整理に追われた。

 近年は桜の名所で若者が伝統衣装の漢服を着て散策をしたり、動画や写真を会員制交流サイト(SNS)にアップしたりなど、人気は高まる一方だ。湖北省(Hubei)咸寧市(Xianning)大嶺村(Daling)は「山桜の里」として売り出し、開花時期の1か月で10万人が訪れるようになった。観光客がアクセスしやすいよう交通網を整備し、特産品を使った「農村レストラン」が60軒オープン。出稼ぎに出ていた1200人が村に戻り、村党支部の呉義勲(Wu Yixun)書記は「桜が村を活性化してくれた」と喜ぶ。

 中国で最も有名な桜のスポットといえば湖北省の武漢大学(Wuhan University)。キャンパス内の桜花大道などに1000本の桜が植えられ、入場が制限されるほどの人気ぶりだ。大学のある武漢市は昨冬、新型コロナウイルスの被害を最も受けた地域。危険を顧みずに治療を続けた医療従事者の労をねぎらうため今年もキャンパスに特別招待し、13日だけで1万2000人の医療従事者と家族が桜を観賞した。

 武漢大学の桜並木は、日中戦争で武漢市を占領した旧日本軍が植えたのが由来。このため「桜を鑑賞するのは国の恥」という批判がたびたび起きるが、「当時の桜は残っておらず、今の桜は中国人が育てたもの」「日本との国交正常化の際に新たに寄贈された桜も植樹されており、両国の友好を象徴している」と指摘されている。最近の中国の桜ブームは、日本のアニメや映画で美しい桜のシーンがたびたび登場することや、観光や留学で日本を訪れた中国人が桜を鑑賞していることが影響しているという見方もある。桜は日本の象徴だけに、中国の桜とも何かと結び付きがあるようだ。(c)東方新報/AFPBB News