【3月25日 AFP】世界中で人為的に排出される温室効果ガスの3分の1は、「食」に関係しているとの論文が発表された。欧州連合(EU)の共同研究センター(Joint Research Centre)が主導したこの調査では、食料生産者から消費者、廃棄に至るまでの食料の流れを追跡している。

 土地開墾や森林伐採、肥料の使用、家畜、さらに食品廃棄物。このいずれもが要因となり、地球上の77億人の需要を満たすための食料システムから温室効果ガスが発生している。

 これまでにも数多くの報告で、食料の気候フットプリント(原材料調達から廃棄・リサイクルまでに出る温室効果ガス排出量を二酸化炭素<CO2>に換算した「カーボンフットプリント」に類する表現で、CO2以外の温室効果ガスも含む)を数値化する試みが行われてきた。3月8日付の英科学誌「ネイチャー(Nature)」の食科学関連誌「ネイチャー・フード(Nature Food)」に掲載されたこの論文は、全ての国と部門を包括し、食料の生産から梱包(こんぽう)、流通、食品廃棄物の処理までの過程を網羅した初めての試みだと執筆者らは述べている。

「食料システムには改革が必要だ」と、論文を発表した研究者らはAFPに語り、自分たちのデータベースが、温室効果ガス排出量の低減対策がどの段階で最も効果を上げるかを見極める一助になればと期待を寄せている。

 研究チームが今回の論文で利用したのが、1990年から2015年までの食料システムからの温室効果ガス排出量を推定して構築した世界的なデータベースだ。

 論文によれば、排出量の増加は人口の伸びより遅れて起こるため、同期間に「人口増加と食料関連の温室効果ガス排出量との関係に乖離(かいり)」が生じていた。しかし、世界各地で幅広い差異が見られ、複数の国や地域では、内需と輸出両方にけん引されて排出量が大きく上昇していた。

「私たちの得た結果は、食料システムからの温室効果ガス排出量がかなりの割合を占めるという従来の所見を裏付けている」と研究チームは指摘している。

 推定値は25~42%で、これは国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が示した21~37%を上回る。これは、世界の食料システムをより幅広い視野から捉えているのが一因だ。

 論文は、全体として、2015年の温室効果ガス排出量のうち、食料システムによるものが34%を占めていると結論付けている。