温室効果ガス発生源、3分の1は「食」に関係 EU研究
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■食料システムは、さらにエネルギー大量消費型に
食料システムからの温室効果ガス排出量のおよそ半分はCO2だ。主に土地利用や、梱包、輸送、加工段階で排出される。土地利用に関して主な原因は、森林伐採による炭素放出や有機質土壌の分解だ。
排出量の3分の1を占めるのがメタン。牛、羊、ヤギなどの家畜が放出し、コメの生産や生物系廃棄物の処理からの発生もある。100年単位で見ると、メタンの温室効果はCO2の28倍だとされている。
残りは主に肥料から発生する窒素酸化物だが、今回発表された論文によれば、冷凍装置でよく使われるフッ素化ガスも少量ながら増加している。
食料システム由来の温室効果ガスの2015年における6大排出国・地域は、中国(世界合計の13.5%)、インドネシア(8.8%)、米国(8.2%)、ブラジル(7.4%)、EU諸国(6.7%)、インド(6.3%)となっている。
世界の食料システムは、エネルギー大量消費型に移行しつつあり、その温室効果ガス排出量の3分の1近くはエネルギー消費から来ていると研究者チームは指摘している。
流通段階での排出量も上昇しているが、論文によると、食料の輸送によって排出される温室効果ガスは梱包によるものほどではない。2015年の食料システム全体で見ると、食料輸送によるガス排出量が全体の4.8%だったのに対し、梱包は5.4%だった。
研究チームは、サプライチェーンの効率性を高め、排出量を削減し、かつ、消費者がより健康的な食生活を送れるような施策を呼び掛けている。
昨年11月の米科学誌サイエンス(Science)に掲載された研究論文は、次のような予測をしている。食料システムからの温室効果ガス排出について何も対策を取らずに放置しておけば、それだけで、気温の上昇幅を1.5度に抑えるという気候危機防止の上限を2050年までに超えてしまうと。
国連の最近の発表によると、世界で2019年に消費者向けに提供された食品のうち、家庭や小売業界、飲食・宿泊業界などで廃棄された量は17%(ほぼ10億トン)に上った。
今年開催予定の第1回国連食料システムサミット(World Food Systems Summit)では、こうした問題が取り上げられる見込みだ。(c)AFP/Kelly MACNAMARA