【3月8日 東方新報】中国で昨年末から今年にかけ、高級酒の偽造・密造グループの摘発が相次いでいる。春節(旧正月、Lunar New Year)のお祝い品や贈答品で高級酒は人気が高く、あぶく銭を手に入れようとする違法グループの取り締まりを強化している。

 広州市(Guangzhou)警察は1月に「スコール作戦」と名付けた集中取り締まりを展開した。有名ブランドの白酒やワインなどを密造した20グループと36か所の拠点を突き止め、62人を逮捕。ニセ酒計1万4800本を押収した。密造グループ全体の販売網は多くの省に及び、密造に絡む総額は1億3000万元(約21億6900万円)を超えた。広州市伍仙橋(Wuxianqiao)地区を拠点にしたグループは「家族ぐるみ、地域ぐるみ」で酒を密造し、偽の包装箱やラベルの製造から独自の販売ルートまで構築しており、「闇の産業チェーン」を形成していた。

 北京市警察は昨年12月から特別作戦を開始。低価格で購入した酒を高級酒の瓶に入れ替えるなどした15グループを解体、50人を逮捕し、ニセ酒計3万5000本や偽造装置35台を押収した。今年1月4日には、偽物の茅台(マオタイ)酒を売っていた宝石店経営の男女を逮捕。2人は店の貴金属と交換してニセ茅台酒を手に入れ、店頭や中国版LINE「微信(ウィーチャット、WeChat)」のグループチャットを通じて1本1500元(約2万5000円)で販売していた。

 上海市警察も貴州省(Guizhou)の警察と連携し、偽造グループを摘発した。上海の住人が貴州省の業者から総額100万元(約1670万円)の酒を仕入れたところ、偽物と判明。偽造グループの11人を逮捕した。グループが関わった違法な売り上げは5000万元(約8億3400万円)を超えるという。

 最もニセ酒造りのターゲットとなるのが、中国で「国酒」とも言われる貴州茅台酒(Kweichow Moutai)だ。貴州省特産のコーリャンやトウモロコシなどを原料とし、原材料から蒸留まで徹底した管理のもとに造られ、高品質な蒸留酒として世界的に知られる。中国に国賓が訪れると茅台酒が振る舞われることが多く、古くは米国のリチャード・ニクソン(Richard Nixon)大統領や田中角栄(Kakuei Tanaka)首相も茅台酒のもてなしを受けた。

 茅台酒を製造する企業「貴州茅台」は近年、商品の種類を絞って出荷量を調整して希少価値を高める戦略で業績を挙げている。昨年6月には時価総額が中国本土の製造業で最大の1兆8100億元(約30兆1940億円)に達し、米コカ・コーラ(Coca-Cola)やトヨタ自動車(Toyota Motor)を上回る規模に成長した。そのため中国では茅台酒が投機の対象となるほどだが、その希少価値とブランド力を悪用したニセ酒造りが後を絶たない状況が続いている。(c)東方新報/AFPBB News